知財研フォーラム

フォーラム82号

知財研フォーラム 2010 Summer Vol.82

2010年8月発行
在庫なし

Contents
巻頭言
野木森 雅郁(のぎもり まさふみ)〔アステラス製薬 代表取締役社長〕
【特集】環境と知財
2 環境技術の移転と知財制度を巡る国際情勢
  菱沼 剛(ひしぬま たけし) 〔(財)知的財産研究所 客員研究員〕
 知財制度は地球温暖化対策技術の移転に障害か。特許権の強制実施許諾の活用がTRIPS協定と整合的であるか、先進国と新興国を含む開発途上国との間で、利害・見解の衝突が見られる。 条約法解釈の見地からの緻密な分析は重要であるものの、加えて国際情勢の動向には注意を要する。環境技術の性質、特許権と営業秘密との関係、新興国からの技術移転も視野に入れて考察する必要があろう。結束が強い開発途上国に対して、先進国間の利害関係は一致するとは限らないことに配慮も必要である。
10 「公共の利益保護」を理由とした司法的強制実施許諾判決
 
黒瀬 雅志(くろせ まさし)〔協和特許法律事務所 弁理士〕
-『排ガス脱硫方法」特許侵害事件、中国最高人民法院判決(2008)民三終字第8号-
 中国最高人民法院は、「本件排ガス脱硫システムがすでに発電所に据え付けられ実際に稼働していることから、もしその停止を命じたなら、現地の社会公衆の利益に直接重大な影響を及ぼす」ので、「権利者の利益と社会公衆の利益を十分考慮した上で」特許権の侵害行為停止請求を認めないことは不適切ではない、との判断を示した。
16 技術移転と知的財産権を巡るポスト京都議定書の国際交渉
 
上野 貴弘(うえの たかひろ)〔(財)電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員〕
 発展途上国への排出削減技術の移転は、ポスト京都議定書の国際交渉における重要な議題であるが、途上国が強制実施許諾など知的財産権保護の緩和を要求し、知的財産権を保護したい先進国との溝を深めている。途上国の要求の背景には1960年 代から続く南北問題があるが、現在は当時とは状況が変化し、深化する国際分業の中で途上国への技術移転が起きている。こうした状況変化を踏まえた上で、技術移転を加速させるためには、知的財産権保護と利用促進を両立させる国際的な取り組みを検討すべきである。
【寄稿】
25 地理的表示の保護と商標制度について
 
小林 徹(こばやし とおる)〔(財)知的財産研究所 嘱託研究員 (特許庁知的財産研究官)〕
 「地理的表示」の保護の根拠は、その「品質保証機能」にあり、この機能を適確に発揮させるためには、制度設計において、不適格者の排除と適格者の使用機会の確保を図ることが必要である。国際的には「絶対的保護」か「条件的保護」かの対立があるが、後者の立場に立つ我が国としても、少なくとも、国内で無名なものでも、登録によって保護が可能となるような制度(「積極的保護」)の導入を検討する必要があると思われる。
30 知財分野における国際公共政策『遺伝資源等の保護と活用について』
 
大槻 真紀子(おおつき まきこ)〔志賀国際特許事務所 弁理士〕
竹元 利泰(たけもと としやす)〔第一三共株式会社 知的財産部 弁理士〕
東崎 賢治(とうさき けんじ)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
中野 宏和(なかの ひろかず)〔特許庁 特許審査第二部 一般機械 審査官〕
 遺伝資源の活用は医薬品開発等のために有用であるが、途上国のアクセス制限的な動きは、世界的なイノベーションを阻害するのではないかと懸念されている。そこで、遺伝資源の保護と活用の促進に向けて、「我が国の事業者が事業活動を円滑に行えるように」という視点に立ち、遺伝資源のアクセスの促進、不正な取引の防止、遺伝資源の出所開示のあり方、利益配分等契約の適正性・履行の確保を主な論点として検討を行った。
【連載】
41 WTOパネル報告書の分析(第3回)
WTO法研究会
  尾島 明(おじま あきら)〔東京地方裁判所総括判事〕
江見 健一(えみ けんいち)〔京都地方裁判所判事〕
野本 新(のもと あらた)〔シティユーワ法律事務所 弁護士〕
大江 修子(おおえ ながこ)〔TMI総合法律事務所 弁護士〕
門伝 明子(もんでん あきこ)〔TMI総合法律事務所 弁護士〕
河野 一郎(こうの いちろう)〔東京地方裁判所判事補〕
小松 京子(こまつ きょうこ)〔東京地方裁判所判事補〕
47 アジアにおける知的財産への取り組み①
インド-12億の頭脳が生み出す知的財産
 
鈴木 伸一郎(すずき しんいちろう)
〔前(社)発明協会 アジア太平洋工業所有権センター長/東京農工大学大学院 技術経営研究科客員教授〕
 近年のインド経済の発展は、わが国産業界にとって馴染みの薄かったインドの知的財産権制度についても、その重要性を増している。本稿では、インドの知的財産権制度とその実務的運用について、背景となった社会的・経済的側面から考察する。
55 判例研究①
ライセンス契約における特許の有効性及び技術的範囲の誤信
 
松田 俊治(まつだ しゅんじ)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
塚本 宏達(つかもと ひろのぶ)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
藤本 祐太郎(ふじもと ゆうたろう)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
-平成21年1月28日知的財産高等裁判所第3部判決(平成20年(ネ)第10070号損害賠償請求控訴事件)-
  本判決は、ライセンシーの特許の有効性及び発明の技術的範囲の誤信を理由に錯誤無効が主張された事案につき、不返還特約の存在や錯誤の不成立を理由に既払契約金の返還を否定した。本判決の結論は賛成だが事案の特殊性に留意する必要がある。ライセンシーの事前調査義務等については、理論上及び実務上更なる検討が必要であろう。本稿では、本判決の解説を中心に関連するラ イセンス契約一般の問題に係る検討を行う。
66 中国の法改正・判例紹介①
 
北京魏啓学法律事務所
北京華録百納影視有限公司が 上海全土豆ネットワーク科技有限公司を訴えた著作財産権侵害紛争事件
71 韓国の法改正・判例紹介①
 
金 容甲〔金・張法律事務所 弁護士(韓国)〕
韓国での「知的財産権の不当な行使に対する審査指針改正」
77 著作権と文学者-11
カナダにおける著作権とL.M.モンゴメリの活躍
  園田 暁子(そのだ あきこ) 〔中京大学 国際教養学部 准教授〕
   81 第65回ワシントン便り
  中槇 利明(なかまき としあき) 〔(財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
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