フォーラム94号
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知財研フォーラム 2013  Summer Vol.94
特集 産業財産権の適時、適切な保護と権利の質の維持のための方策
■2013年8月発刊
在庫なし
フォーラム94号 目次(縮小画像) 目次PDF  本号では、「産業財産権の適時、適切な保護と権利の質の維持のための方策」と題した特集を組んでおります。
 弊所は、昨年度、特許庁から「平成24年度産業財産権制度問題調査研究 適切なタイミングでの権利取得のための特許制度の在り方に関する調査研究」、「平成24年度産業財産権制度問題調査研究安定的な権利付与に向けた制度に関する調査研究」、「平成24年度産業財産権制度問題調査研究 特許性判断におけるクレーム解釈に関する調査研究」を受託し、我が国及び諸外国企業の最新の知財戦略の実態を調査・分析した上で、今後さらなるグローバル化が進む中で我が国ユーザの知財戦略に即応していくための制度の在り方を提言し、当該調査・分析結果及び提言を、我が国企業等へ発信するとともに、我が国特許庁に求められる施策・体制を検討するための基礎資料とすることを目的として報告書をとりまとめました。
 この度発行致します「知財研フォーラム」第94号(夏号)では、「産業財産権の適時、適切な保護と権利の質の維持のための方策」と題する特集を組み、上記事業に委員等として参加頂いた先生方にご執筆頂き、国内の知財関係者をはじめとする読者に、我が国の総合的・戦略的な知財戦略の強化の重要性が啓発できるような特集となることを企画しました。
Contents
巻頭言
亀井 正博 (Masahiro Kamei) 〔富士通株式会社 知的財産権本部長〕
【特集】産業財産権の適時、適切な保護と権利の質の維持のための方策
3 産業競争力の強化のための特許制度のあり方
― グローバル知財システム構築のために求められる方策 ―
  熊谷 健一 (Kenichi Kumagai)  〔明治大学法科大学院 教授〕
知的財産基本法の施行から10年が経過した。2013年6月7日に決定された「知的財産政策ビジョン」の4つの柱の1つとして「産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築」が挙げられている。本稿では、特許制度を中心とした我が国の国内外における取組、諸外国の動向を検証しつつ、産業競争力の強化のための方策についての検討を行った。
10 104条の3時代のクレイム解釈
― ポストキルビー時代におけるリパーゼ判決の意義 ―
 
吉田 広志 (Hiroshi Yoshida)  〔北海道大学大学院法学研究科 教授〕
特許性の審査における発明の要旨認定と、侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の解釈について、2つの最高裁判決を軸に検討を試みた。特許法104条の3 導入後におけるリパーゼ判決の位置づけについて、試論を提示した。
18 安定的な権利付与に向けた制度の検討
  濱田 百合子 (Yuriko Hamada) 〔栄光特許事務所 所長 弁理士〕
平成23年度及び平成24年度日本弁理士会特許委員会において、出願人と第三者との利益・負担のバランスを考慮した上で、すべての出願に対して一定の公衆審査の機会を与える方法を検討すべきとの結論に至り、具体的な制度の検討を行った。本稿では、これらの検討結果を踏まえつつ、瑕疵のない有効な特許をいかに迅速かつ的確に付与していくかについて、弁理士の立場から考察したことを述べることとする。
26 適切なタイミングでの権利取得のための特許制度の在り方
 
鈴木 康裕 (Yasuhiro Suzuki) 〔三菱電機株式会社 知的財産渉外部 次長〕
本稿は、「適切なタイミングでの権利取得のための特許制度の在り方に関する調査研究」に係るものである。調査の結果、早期審査は評価が高く今後の継続を望む声が多かったが、 審査着手を猶予する制度は他者特許監視の負担増大を理由に導入に慎重な声が多かった。
このような結果となった原因を分析し、審査着手を猶予する制度の導入の必要性について国際標準を含む知的戦略の観点から考察した。
【寄稿・連載】
35 判例研究⑩
テレビCM原版の著作権の帰属
― 知財高判平成24年10月25日裁判所ウェブサイト(平成24年(ネ)第10008号) ―
 
松田 俊治 (Shunji Matsuda)  〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
中島 慧 (Kei Nakajima)  〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
テレビCMの原版は、制作会社、広告代理店及び広告主の三当事者が関与しながら製作されるものであるが、三当事者のいずれにその著作権が帰属するか従前から争いがあった。そのような状況において、本判決は、テレビCM原版の著作権の帰属について具体的に判断した初の事例として、実務上重要な意義を有する。本判決は、テレビCM原版の著作権の帰属を判断する手法について、テレビCM原版は映画の著作物(著作権法2条3項)であり、映画の著作物に関する規定(同法16条本文及び29条1項)に基づいて著作者及び著作権者を認定すべきであるとした。そして、映画製作者については、テレビCM原版制作の特徴を考慮し、撮影、編集の具体的作業が寄与する程度は相対的に低いとして、当該作業を担当 した制作会社の映画製作者該当性を否定し、広告主が同法29条1項の「映画製作者」に該当すると判断している点に特色があり、広告業界の実務に与える影響は大きいと思われる。
50 日本におけるファッションデザインの完全な模倣からの保護
 
Thomas Farkas 〔法学修士(知的財産法) 弁護士 マックスプランク知的財産法及び競争法研究所(ドイツ・ミュンヘン)〕
本稿では、まずファッション業界について現状を紹介するとともに、ファッションの保護を知的財産法及び不正競争法の観点から分析し、併せてコピーの自由と創造的な作品の保護について検討した。
58 試練に立つヒトES細胞関連発明の生命倫理を巡る特許適格性論
  南条 雅裕(Masahiro Nanjo) 〔東京ACTi国際特許事務所 代表弁理士〕
2011年10月18日,EU法に関して統一した法の適用・解釈を担う欧州連合司法裁判所は,ドイツ連邦最高裁判所からの付託に基づき、ヒト胚の使用を伴う発明の特許適格性に関してEUにおける主要な法的枠組みを提供する,いわゆるEUバイオ指令の6条(2)(c)における「ヒト胚」の解釈を与える判決を下した。しかし、同判決をもってしても、EUにおける、ヒト胚の使用を伴う発明の生命倫理を 巡る特許適格性の論争に終止符が打たれることはなかった。本稿では、欧州の最新の動向を踏まえつつ、我が国におけるヒトES細胞関連発明に関する我が国における特許保護の在り方を模索する。
70 中国における営業秘密保護対策
 
分部 悠介 (Yusuke Wakebe) 
 〔IP FORWARD法律事務所 代表弁護士
  IP FORWARD China(上海擁智商務諮詢有限公司) 董事長・総経理〕
島田 敏史(Toshifumi Shimada) 〔IP FORWARD法律事務所 弁護士〕
昨今、退職した技術者経由で、「メイドインジャパン」の技術が海外に流出することがクローズアップされ、技術流出を巡る国際的な紛争も増えてきている。今後、経済の重心がアジアに移るに従って、アジア諸国における技術・営業秘密の保護は一層、重要になってくる。特に、中国においては、近年、営業秘密盗用に係る紛争事例も増加してきており、この点、中国の法制度、実情に係る特殊性も理解する必要があり、 企業としては、中国の状況を踏まえた営業秘密漏えい防止のための社 内体制を構築し、万一、漏えいした場合に取りうる手段を理解しておくことが重要である。かかる問題意識に基づき、本拙稿では、中国における営業秘密保護に係る法制度、法執行の実情等を中心に説明する。
80 独占的通常実施権者による特許権侵害者に対する差止請求の可否
 
石井 美緒 (Mio Ishii) 〔明治大学兼任講師 弁護士〕
特許権の独占的通常実施権者が、特許発明の無権原実施者に対して差止請求ができるかは、特許権者の有する差止請求権の代位行使の可否が主な問題となり、肯定説の中でも、特許権者と 独占的通常実施権者との間で侵害排除義務が定められている場合に限るか(さらには黙示の合意も含むか)等の点で争いがある。筆者は、現行法上は明示の合意ある場合に限りこれを認めつつ、「新たな独占的ライセンス」の導入に賛同する。
   89 第77回ワシントン便り
  諸岡 健一 (Kenichi Morooka) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
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