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平成18年度調査研究の概要

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【特許庁産業財産権制度問題調査研究】

1. 各国における商標権侵害行為類型に関する調査研究

 商標制度は、登録商標に化体した業務上の信用を保護することを目的としており、魅力あるブランドを活用してより価値の高い商品・役務を提供するための環境整備として、これまで必要に応じて商標法の改正が行われてきた。

 そして、ブランド保護の強化及びその実効性を確保するための権利侵害への対応が求められる中、とりわけブランド価値が高い著名商標の保護、普通名称としての商標の使用に対する制限、不使用登録商標の権利行使制限、そして偽ブランド品や模倣品を扱う個人輸入代行業者の責任については検討課題とされてきた。

 本調査研究は、このような検討課題に対し、欧米各国(米、欧州共同体、英、独、仏)及び中国における法制度を俯瞰するとともにそれに関連した判例を収集分析し、併せて我が国ユーザーへのニーズ調査及び商標権侵害行為の実態調査を行うことにより、国際比較及び国内ニーズの観点を含め我が国の商標制度の在り方についてとりまとめを行った。

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2. 審判制度に関する今後の諸課題の調査研究

 近年、特許審判制度においては、無効審判と異議申立の一本化、侵害訴訟における無効判断の法定化等の整備がなされており、また、裁判所においても、特許訴訟等の東京、大阪両地裁の専属管轄化、専門委員制度の導入、知的財産高等裁判所の設置等の体制整備が進められてきた。

 しかしながら、これによっても解決されていない課題が残されており、解決の方向性の検討及びそれに向けての論点整理をしていくことが求められている。

 本調査研究では、これら諸課題のうち、審決取消訴訟の審理範囲の制限、訂正を前提にした侵害訴訟判決、無効審判の蒸し返し防止、及び行政審判における特許審判の制度的特徴の四つを対象として採り上げ、企業等に対するアンケート及びヒアリング、並びに海外調査の結果を踏まえ、委員会において検討を行い、その方向性及び論点の整理を行った。

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3. マドリッド協定議定書の利用に係る我が国ユーザーが抱える課題に関する調査研究

 我が国は2000年にマドリッド協定議定書(以下、「議定書」という。)に加盟した。この議定書に基づく国際出願のユーザーにとってのメリットは、各国官庁への直接出願に比べ、手続の簡素化、容易な書類作成、権利管理の簡便化、出願経費の削減、審査結果の早期の把握、事後指定による保護拡張等である。

 我が国ユーザーの国際出願の件数は、増えてはいるが、主な欧州諸国に比べて議定書の利用率は低い状況であった。

 これには、何らかの我が国独特の背景・課題があると推察できる。

 このような問題意識に基づき、本調査研究では、議定書の制度、運用等の課題について、国内ユーザーにアンケート調査、ヒアリング調査を行い、海外ユーザー及び海外官庁の意見を調査し、これら調査結果に基づき検討を行い、議定書の課題について提言を行った。

 今後、これら課題が解決されることによって、議定書のメリットが我が国ユーザーにより享受され、商標の国際的保護が更に円滑になることを期待する。

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4. 我が国企業の国際競争力強化にむけた知的財産戦略の評価に関する調査研究 -知的財産統計に関する調査研究-

 知的財産制度あるいは企業の知的財産戦略を考える際には、それらを統計データに基づき客観的に評価することが重要である。本調査研究は、知財制度の変更や技術市場の動向など企業の直面している知財環境の変化が、知財戦略に与える影響を統計的に分析することを目的としている。知財制度については、特に、審査請求期間の短縮や料金改定、発明補償制度の見直しといった制度変更の影響を、計量経済学の手法を用いて明らかにしている。また、技術市場の特性により企業のライセンス戦略やブロッキング行動がどのように異なるかといった問題や、出願分野の多様性が企業価値にどう影響するかといった問題などについても分析を行っている。

 こうした分析は、特許制度や技術市場の変化に応じた企業の効率的な知的財産活動等を考える際に、有益な知見を提供するものと考える。

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5. 我が国企業の国際競争力強化に向けた知的財産戦略の評価に関する調査研究 -知財戦略事例集-

 グローバル、ボーダレス時代となり、かつてのキャッチアップ型からフロントランナー型に転換してきた日本企業にとって、その競争力を高めるためには、事業戦略や研究開発戦略とともに、知的財産戦略を含めた三位一体で事業経営を進めることが必須の時代となっている。各企業が三位一体となった知的財産戦略を実行するためには、発明をどのように効率的に創造するのか、創造された発明をどのように発掘し、どのように保護すべきなのか、取得した特許権をどのように活用するのか、また、そのためにどのような体制・環境を整備すべきなのか、といった具体的な問題を解決していくことが必要となる。

 そこで、本調査研究では、発明の創造、保護、活用の各フェーズにおいて考慮すべき観点等や、複数の発明を商品や技術分野等との関係で「群」として管理する手法、さらに、事業戦略や研究開発戦略を意識しつつ高度な知的財産戦略を構築し、実行するための企業内の体制や環境について研究し、これらを取りまとめた。

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6. 今後の弁理士制度のあり方に関する調査研究

 知的財産や特許を重視するプロパテントの流れの中で、知的財産の専門家としての弁理士の活用を目指して、平成12年に80年ぶりに弁理士法が全面改正された。この改正により、弁理士は、サービスの強化を目的とした業務の拡大や、弁理士の量的拡大を図るための弁理士試験の各種施策が行われた。さらに附則として法律施行5年後に見直しと検討を行うことが規定された。

 本調査研究では、弁理士法改正後に弁理士制度を取り巻く状況が変化する中で弁理士制度の実態と今後の方向性について検討を行うために、平成17年度に検討を行った4つのテーマ(弁理士試験制度、弁理士研修制度、弁理士倫理(利益相反規定)、弁理士情報の公開)に引続き、「業務範囲の見直し」、「特許業務法人制度」、「法人代理・従業員代理」、及び「付記弁理士制度」の4つのテーマについて幅広く議論、検討を行い、問題点を明らかにした。

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7. 知的財産関連人材育成を促進するための手法に関する調査研究

 知的財産に関する人材育成は、一部の高度専門職にとどまらず、それらを補佐・補助あるいは支援する人材、さらには知的財産関連の「裾野人材」等をも育成対象とすることが肝要であり、本調査研究において、その制度的支援として、検定・認定・資格などの方策について検討した。

 その結果、弁理士や知財部員等の専門中核人材を補佐・補助あるいは支援する専門周辺人材のうち、「知的財産事務補佐・補助業務」等で検定・認定の効果が期待できることがわかった。

 また、知的財産マネジメントの領域で活躍する経営系や技術系の人材を育成するための学位相当資格のモデルを作成した。

 他方、国民全体の「知財民度」の向上には、特に若年層に「オリジナリティの尊重」を浸透させることが必要であるが、検定・認定は子供向けよりもその指導者向けに効果がある可能性があることがわかった。

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8. 知的財産の適切な保護のあり方に関する調査研究

 デジタル化に伴い新たなビジネス形態が出現する中で、事業者間の公正な競争秩序の観点から不法行為(民法第709条)により違法と評価される競争行為が発生したり、これまで問題として認識されてなかった競争行為が不正競争の観点から重要な問題としてクローズアップされたりしている。ビジネスの健全な発展のためには、ビジネスを阻害する行為に対してルールを明確にする必要があり、不正競争防止法の役割は極めて重要であると言える。

 本調査研究では、①商品化ビジネスに代表されるような財産的価値を有する表示の需要者吸引力を不正に利用する行為を不正競争とすること、②データベースの作成と提供を事業として行う者が、安心してその事業を営めるような環境を整備すること、③それらの検討を踏まえながら、現行の不正競争行為の限定列挙にとらわれない補充条項あるいは一般条項を設けること可能性と課題について検討を行った。

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9. 知的財産の適切な活用のあり方に関する調査研究

 知的財産権のライセンスの適切な保護のため、我が国では、特許権等の産業財産権について、ライセンシーの実施権の登録制度を設け、登録による対抗要件制度を採用している。しかし、現行の登録制度は企業活動の実態に適合していないとの指摘もあり、実際、十分に活用されているとは言い難い。登録を備えていない場合、ライセンシーは、権利者の倒産時や権利譲渡時に事業の存続が困難になるリスクを抱えるため、それに対する制度的対応が望まれていた。そこで、本調査研究では、新たな制度設計の前提として、産業界の契約実務及び要望の取り纏め、海外制度の調査を行うとともに、通常実施権等の法的性質について検討を行った。これらの調査及び検討内容を踏まえて、1.新しい登録制度によるライセンシーの保護について(ライセンス契約登録ファイル制度)、2.通常実施権登録制度の在り方について、の二つの制度提案を行った。

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10. 特許発明の円滑な利用に関する調査研究

 ライフサイエンス分野の上流技術や情報通信・電機分野の技術標準に関する特許発明などの特許権の行使により、かえって技術の発展や公益が阻害される可能性が指摘されている。本調査研究は、このような特許発明の円滑な利用に関する問題に対して、適用可能性のある又は参考となる知的財産権法以外の法理という観点から検討したものである。まず、特許権の権利行使に関連した独占禁止法の規制内容について、日本、米国、欧州のそれぞれを検討した。特に、特許権のライセンス契約について規制する内容、独占禁止法上問題となった事件について調査した。次に、米国の特許権行使における差止命令の認否について、eBay判決以降の事件を調査した。次に、我が国の民法の権利濫用法理についての学説、判例、特許権行使における事例を調査した。最後に、「公共の利益のため」の裁定制度との関連において、憲法、民法、土地収用法における「公共の利益のため」私権を制限する法理を調査した。

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11. 先使用権制度の円滑な利用に関する調査研究

 我が国を含む世界の主要国の特許制度においては、他者が特許出願をする前から、事業やその準備をしていれば、他者の特許権の効力の例外として無償の通常実施権が得られる制度、いわゆる先使用権制度が設けられている。

 一方、先使用権制度が必ずしも利用しやすい制度になっていないとの指摘があり、平成17年度の産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会において、判例等を基に先使用権制度の明確化、先使用権の立証手段の具体化を図り、先使用権制度の利用の円滑化を図るためのガイドライン(事例集)を作成することが重要との答申が出された。

 本調査研究では、法曹界、学界、産業界等からの有識者による委員会を構成し、先使用権制度の明確化、先使用権の立証手段の具体化についての前記委員会での議論の結果をまとめるとともに、諸外国(英・独・仏・中・韓・台)における先使用権制度の運用の実態や判例等について、現地法律事務所等に調査を依頼し、そのレポートの情報及び見解に基づき取りまとめた。

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12. 先端医療分野における最先端技術の特許保護に関する各国制度の調査研究

 近年、遺伝子治療や再生医療等の先端医療分野においては技術の革新に目覚ましいものがある。これら先端医療分野の技術について、諸外国における保護の現状、先端技術を保護するために各国が取り組んでいる諸課題を明らかにするとともに、我が国において、先端医療分野の技術をより適切に保護するための制度・運用のあり方について基礎的な調査を行う必要性が認識されていた。本調査研究では、先端医療分野の技術を保護する制度、その運用等についての検討を行う際の基礎となる資料の作成を行った。すなわち、遺伝子治療や再生医療等の先端医療分野の技術に関する具体的な研究開発の現状を踏まえ、今後の当該分野の技術に関する研究開発の方向性・知的財産への取組み等に関する研究者・企業等の意識、各国の特許法における関連規定・運用指針及びそれらが作成された背景、特許制度の具体的運用等についての把握・分析を行った。

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13. 諸外国におけるタイプフェイスの保護の現状と問題点に関する調査研究

 デジタル化の進展により各種メディアにおけるタイプフェイスの重要性が高まっており、タイプフェイスの保護の在り方について検討が求められている。現状に即した保護の可能性を検討するためには、タイプフェイスに関する市場、タイプフェイスの流通経路、取引形態を明確にし、タイプフェイスの保護の必要性を正確に把握する必要がある。

 本調査研究では、産業界のニーズを収集するとともに、我が国におけるタイプフェイスに関する判例・学説を改めて整理し検討した。また、我が国におけるタイプフェイス保護の検討に資するべく、主要国(米国、イギリス、ドイツ、フランス、欧州共同体、韓国)におけるタイプフェイス保護制度の歴史的経緯及び現状等について調査、分析した。

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【特許庁委託産業財産権研究推進事業】

14. 生物多様性条約下における日本企業の遺伝資源へのアクセスについて-オーストラリアの対応を中心として-
カマル・プリ
クィーンズランド州第一次産業漁業省知的財産商業化室ディレクター
クィーンズランド工科大学法学教授クィーンズランド大学 法学部 教授(前クィーンズランド大学法学部教授)
(平成18年度招聘研究員)

 遺伝資源並びに原住民が有する伝統的知識(TK)、工夫及び慣行の保全、保護及び持続的利用は、すべての人類にとって大きな重要性を有している。

 だが現在、かかる貴重な資産は世界の様々な場所で危機にさらされている。 知識の保有者が有する文化的権利や知的財産権を保護するために生物多様性条約(CBD)は、遺伝資源に対する各国の主権を正式に認め、保全、持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分という3つの目的に基づき行動することを締約国に対し求めている。さらにCBDは、保有国の「事前の情報に基づく同意(PIC)」を得ることを遺伝資源へのアクセスを認められるための条件とした。

 「事前の情報に基づく同意」「相互に合意する条件」「自決権」「文化システムの積極的な保護」「衡平な利益配分」等の概念を究明することよりも、本稿においては、事前の情報に基づく同意の取得に関する手続について主として取り組むこととした。また、本稿ではコモンロー上の「自由同意」の概念と生物多様性条約の提唱する「事前の情報に基づく同意」の相違および生物多様性条約と特許法の関係についても検討した。

 次に、遺伝資源へのアクセスに関するオーストラリア、特にクィーンズランド州の動向について、日本の企業が同州の資源へアクセス可能となるよう実践的な方法を紹介した。オーストラリアでも最も豊かな生物資源を誇る州であるクィーンズランドは、2004年バイオディスカバリー法を制定することを通じて、責任ある系統立った形での遺伝資源アクセスを促進するための原則や手続を定めることに関して主導的な役割を果たしている。

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15. データベースの製作者に対する産業財産権保護-欧州及び日本の保護制度の今後に関する考察-
フランク・ゴッツェン
平成18年度招聘研究員
ルーヴェン及びブリュッセル カソリック大学 法学部 教授、知的財産権センター(CIR) ディレクター

 特許権の実施権被許諾者又は譲渡人による無効請求の可能性について、韓国内外で多くの議論がある。最も議論のあるのは、特に、実施権許諾契約に「不争」条項を含めることが、特許権の濫用に当たるか、独占禁止法の下で反競争行為を構成するか否かの問題であり、又、被許諾者や譲渡人は、信義及び誠実の原則に基づき、たとえそのような条項がなくても、実施権許諾された又は譲渡された特許の有効性を争うことが禁止されているか否かという問題である。この問題は、基本的には、信義と誠実の原則や禁反言の原則のような契約法の一般原則と、産業の発展を促進するという特許制度の目的との間の衝突から成る。この研究は、そのような衝突について、韓国、日本、米国、及び欧州連合を含むドイツの法律、判例、学説等が、どのように運用され、適用され、解釈されているかを比較・分析し、結論的には、この問題をどのように扱うべきかについて、合理的な基準を示唆しようとするものである。

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16. 商標機能及びその侵害事件における役割-EUと日本は相互の経験から何を学ぶことができるのか?-
イラーナ・サイモン
平成18年度招聘研究員
ブルネル大学 法律学講師(前ロンドン大学クイーンメアリー知的財産研究所研究員

 日本と欧州連合は、100年以上にもわたって商標登録制度を運用してきた。それにもかかわらず、いずれの法域にも、商標のどの機能を、法的および経済的に認知すべきかをめぐってコンセンサスが存在しない。

 この研究では、商標の機能が何を意味するかを検討し、商標の機能について分析する際に、これを単に出所表示機能、品質保証機能、又は宣伝広告機能のいずれかに分類するという方法が、商標の機能を単純化しすぎることを論ずる。本稿では、このような方法に代えて、発展し続ける市場の性格を反映する相互に関連し合う機能という、より複雑な枠組みについて認識し、商標が使われる商品の性質により、これらの (1以上の) 機能も異なる事実について認識することを提案したい。

 その次に、裁判所が並行輸入の問題をどのように扱ってきたか、すなわち、日本の裁判所と欧州裁判所が、商標の機能を参照することでそれぞれの判決を繰り返し根拠付けてきたことを考察する。

 結論として、EUは、商標の品質に関する側面についてはっきりと認知している日本の姿勢から学ぶことができ、日本は、商標の宣伝広告機能について認知しているEUの姿勢を参考にすることができる。

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17. DNA配列及び遺伝子イノベーションの効果的な保護
丘大煥
平成18年度招聘研究員
ソウル国立大学校 法科大学 法及び技術学 教授

 本稿では、DNA配列及び遺伝子イノベーションに特許を認めることが、イノベーションを促進する上で望ましいかどうかについて、経済的な観点から検討する。この点について評価するため、DNA配列及び遺伝子イノベーションの特徴について論ずる。DNA配列には、化学物質としての特性と、情報の媒体としての特性の二つの特徴がある。遺伝子イノベーションは、漸進的、連続的、かつ累積的である。こうした特徴があるため、DNA配列と遺伝子イノベーションについては、これに特許性があると自動的にみなすべきではない。

 特許制度の主な問題点は、これが排他的権利に立脚しており、こうした権利が連続的なイノベーションにおける技術の革新を妨げる傾向にあることである。以下では、遺伝子イノベーションの特徴という文脈において特許制度について検討するが、これを通じて特許保護の様々な欠点を明らかにしたい。したがって、先行する開発者にインセンティブを与えつつ、対価を支払う用意があれば、先行者のイノベーションの成果を自由に活用することを後発の開発者に許すような方法を見つける必要がある。

 筆者は、こうした目標を達成するために、まず、明確に定義された「research exemption (研究的使用の例外)」、特許性基準の厳格化、「Purpose-bound Protection (目的限定型保護制度)」を採用することを提案したい。第二に、クリアリングハウス(特許交換所)、遺伝子シークエンス権、自動ライセンス制度を導入すべきである。第三に、「Direct Protection of Innovation (イノベーション直接保護制度)(DPI)」に盛り込まれている優れたルールを特許制度に組み込むべきである。

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18. 中日両国における著名商標保護の比較研究
李明德
平成18年度招聘研究員
中国社会科学院 法学研究所 教授、知的財産権センター 副センター長

 著名商標の保護は、国内及び国際取引において重要な問題であるが、パリ条約及びTRIPS協定は加盟国に対して混同理論及び稀釈化理論の両方に基づく著名商標の保護を義務づけている。これに関連して、日本と中国はそれぞれの商標法及び不正競争防止法においてそのような保護を規定している。本稿は、日本と中国の法規定、実務及び訴訟を比較し、著名商標の保護について中国において生じた問題についていくつかの解決策を見出そうとするものである。

 混同理論及び稀釈化理論に基づき著名商標を保護することは、日本と中国とが共有する見方である。法律規定、実務及び訴訟を比較して、本稿は、商標権の濫用理論を適用したり又は裁判所が未登録の著名商標を保護するために登録商標を無効とすることができるようにするなど、中国が日本のいくつかの実務を参考にするよう提言するものである。また本稿は、中国が商標法のみにおいてではなく、商標法及び不正競争防止法の両方において稀釈化理論に基づいて著名商標を保護するという日本の立法上の実務に従うべきであることを指摘している。<

 企業名と著名商標との関係、及び特定の著名商標の効果に対する対応は、中国において生じた特殊な問題である。本稿は、企業名が名称としての側面と財産権としての側面を有しているとする日本の見解を受け入れることを提言している。前者は企業名登記規定で規律されており、後者は不正競争防止法で規定されている。また著者は、紛争 における特定の著名商標の効力は個別事件に限定されるのであり、広告宣伝や政府の業績評価とは何ら関係がないことを示唆している。

 本稿は、中国の立法、行政及び司法部門が日本の関連法律規定、実務、訴訟を参考にし、中国におけるその著名商標保護を改善するよう結論づけている。

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19. 開発途上国及び地域にとっての知的財産権行使モデル
ジュンポン・ピニョシンワット
平成18年度招聘研究員
中央知的財産国際取引裁判所 上級判事

 知的財産権が、世界中で力強く発展するにつれて、ここ数十年の間に、知的財産権の実体法をめぐる先進国と途上国との違いに関する論議が、再び、脚光を浴びるようになった。とはいえ、先進国と途上国との実務、特に執行をめぐるアプローチの違いに関する検討が、見過ごされてきたように思われる。

 本稿の狙いは、上述のような知的財産権の執行方法をめぐる違いを考察し、比較することである。最初に、ジョン・ロックの労働理論及び財産に関するヘーゲル及びマルクスの理論の解釈を枠組みとする知的財産権概念の正当性根拠を集約することから始める。これに加え、米国及び英国の知的財産権法における抽象的な対象の歴史を分析する。

 次に、先進3カ国 (日本、英国、及び米国) と4カ国の途上国 (中国、台湾、タイ、及びベトナム) における知的財産権行使に対するアプローチを検討し、比較する。さらに、それぞれの国における実務的な視点を重視しつつ、現行法、民事上の救済、刑事上の救済、その他の救済措置、裁判所、及び統計を含む、一定の手続上の問題について論ずる。

 この比較分析結果に基づき、ほとんどの先進国が、知的財産権を保護するために民事上の救済措置を適用し、発展させてきたのに対して、多くの途上国では、このような救済措置をほとんど適用していないことが判明した。一部の途上国では、刑事罰が、知的財産権を行使するための唯一の選択肢となっている。民事上の救済措置および知的財産権の正当性根拠は、全面的に放棄されている。

 本稿では、知的財産権の正当性根拠ならびに国ごとの慣行の違いを調和させる必要性にもとづき、執行実務にとっての最小主義的な解となるようなモデルを提案する。

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20. 知的財産権分析の基礎を構成する限定合理性とその周辺概念について
和田 哲夫
(財)知的財産研究所 長期在外研究員
学習院大学 経済学部 教授

 知的財産権研究に対する「法と経済学」の考え方の浸透にともない、制度変更がどのようなインセンティブの変化をもたらすか、という事前(ex ante)の視点が重要であることが、経済学者のみならず法律学者にも認識されるようになってきた。一方、伝統的な「法と経済学」においては、限定合理性は無視されることが多かったが、90年代以降のミクロ経済学では、むしろ中心課題であり、ex anteのインセンティブ分析に対して根本的疑問及び研究動機を与えている。そして、限定合理性に起因する「不完備性」「記述不可能性」「立証不可能性」といった諸概念に定式化される取引費用は、特許制度そのものと、特許にかかわるさまざまな取引において不可避である。本研究は、これら研究の流れを振り返り、特許の経済分析における効率性概念の基礎を再点検するとともに、限定合理性を正面から認める研究枠組みがあるということを明示し、実証研究を試みるものである。

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21. 欧州商標制度における権利範囲と商標の機能
蘆立 順美
(財)知的財産研究所 長期在外研究員
東北大学大学院 法学研究科 准教授

 商標が市場において果たしている機能については、古くから出所識別機能以外にも、いわゆる品質保証機能や宣伝広告機能等が指摘されてきたところであるが、出所識別機能以外の機能に関しては、商標法上の保護の対象とすべきかどうかにつき議論があった。わが国においても、近時、並行輸入に関する最高裁判例において品質保証機能に関する言及がなされるなど、法律上保護の対象とされる商標の機能の範囲について再検討されているところである。本報告では、欧州商標制度を素材として、商標権の保護範囲の解釈において現れた商標の機能に関わる議論について、類型ごとに学説や裁判例を紹介し、商標の機能に関する理解や位置づけ等についての整理、分析を行いたい。

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22. 1830年代から1960年代にかけての国際著作権法整備の過程における著作権保護に関する国際的合意の形成とその変遷
園田 暁子
(財)知的財産研究所 長期在外研究員
九州大学大学院 人文科学研究院 研究員(派遣時) 現 中京大学 教養部 准教授

 本研究ではイギリスにおいて国際著作権法や条約締結への動きが本格化した1830年代からWIPOが設立された1967年に至るまでの国際著作権法の成立と発展の過程において行われてきた議論を跡付け、著作権保護に関する国際的合意がいかにして形成されてきたのか明らかにすることを目指した。著作権法の歴史的研究を行う研究者たちが一致しているように、20世紀、そして今日の著作権法は著作権を経済的権利として確立した19世紀の著作権法にかなりの程度依拠している。国際著作権条約が、二国間条約、多国間条約という段階を踏んで発展し、各国の著作権の保護水準引き上げにおける牽引力となったこと、ベルヌ条約やアメリカの国際著作権法(1891年)の成立に至るまでの期間は特に、各国の文学者たちが著作権法の在り方が生み出される作品の質や一国の文化に大きく影響するとの認識のもとに直接的、積極的に著作権をめぐる議論に参加したことを確認した。

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23. 商標品の並行輸入制限行為の規制における自由移動規定と競争法
青柳 由香
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 本報告は、知的財産権に関する並行輸入の判例を中心に検討することにより、EC法における自由移動規定と競争法の関係を明らかにすることを目的とする。EC条約は、ECの経済的および社会的な目的を達成するための最も重要な手段として域内市場を用いる。この域内市場を実質的に機能させるためのルールの中核にあるのが、自由移動規定と競争法である。条文上、両法制度は異なる規制対象を予定しているようであるが、事案によっては両者の重畳的な適用が見られる。本報告では、商標品に関する並行輸入の判例を題材として、ECJによる判例法理の構築を初期の段階から検討する。これにより自由移動規定および競争法の適用の背景にあるECJの理解を検討し、並行輸入行為の規制を通じた域内市場の実質的機能の確保における両者の関係・機能を明らかにする。

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24. 技術標準化プロセスでの知的財産権の行使と競争政策
伊藤 隆史
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 情報産業分野を中心に規格の標準化が進展しているが、ここでは製品開発とその普及の早期の実現をはかることが目的とされる。これにより消費者にあっても製品の相互互換性が実現されることによる利便性を享受することができる。近年では、標準策定作業が標準団体を設立することによってなされることが多くなっている。この標準策定プロセスでは、構成員が自らの権利を秘匿したまま、保有する知的財産権が付着した技術を標準に取り込ませるよう働きかけ、その実現後に知的財産権の権利行使として、高額のロイヤリティを要求するなどの機会主義的行動を行うことが考えられる。この行為を防止するためにパテントポリシーによって事前に知的財産権の保有の有無を開示することが求められることが多い。本報告では、これに反する行為について、米国での事例を手がかりに、独占禁止法の適用可能性を探りつつ機会主義的行動を防止するための代替策についても検討を行う。

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25. ライセンス契約の形態の選択-石油化学産業のケース-
真保 智行
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 企業がある市場に参入する際には、その製造技術を獲得しなければならない。そして、外部から製造技術を導入する際には、単なるライセンス契約のみではなく、JV(ジョイント・ベンチャー)が利用されることがある。実際に石油化学産業では、ライセンサーとライセンシーとのJVが多数設立されている。

 また、JVの機能に対して、知識ベースの理論は企業には暗黙的な知識をコード化する組織原則があり、知識移転を促進するメカニズムがあるとし、取引費用の理論はJVにはパートナーの機会主義をコントロールするメカニズムがあると考える。そこで、本研究では石油化学産業を対象にして、ライセンス契約の形態に影響を及ぼす要因を事例分析と計量分析によって検証し、なぜJVが利用されるのかを明らかにする。その結果、JVはパートナー間での知識移転を促進するためではなく、ライセンサーとライセンシーの機会主義的な行動をコントロールするために利用されることが明らかとなった。

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26. 大学等の研究に対する特許法制度上の配慮の必要性
高田 恭子
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 大学や公的研究機関(以下,「大学等」という。)における研究環境・研究形態は急速に変化している。研究成果の知的財産権としての活用や,産学官連携による研究成果および研究機能の社会還元が強く進められ,大学等は産業界と深くコミットするに至る。その結果として,大学等が特許の権利主張の対象とされる可能性を否定することはできない。

 そこで,本研究では,大学等における研究や教育の遂行に際し,特許法制度上特別な配慮が必要かどうかにつき検討する。具体的には,大学等の研究の公益性や社会的要請と,産業構造の変化と知的財産の社会的重要性の高まりを踏まえた上で,大学等と産業界との関係の変化,大学等と大学等の研究者との関係,権利活動主体としての大学等などについて実態を調査し,法的に分析した。その分析,検討結果により,特許法制度上,大学等の研究に特別な配慮をすることの必要性が明らかとなった。

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27. 後発医薬品参入と法制度間調整:薬事規制、知的財産法と独占禁止政策
中川 晶比兒
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 医療費削減の一環として重要な位置付けを占める後発医薬品の参入は、薬事規制、知的財産法、独占禁止政策という、製薬産業の構造を規定する三つの法政策のいずれにとっても取り組むべき争点を提起してきた。本研究では、後発医薬品参入に関する法制度上、最も発達しており、かつ判決例の蓄積も多い米国を比較法素材として、後発医薬品参入に関する諸問題を、それを直接規定する法制度単体の趣旨から分析するのではなく、三つの法制度間の調整という観点から制度横断的な検討を行った。具体的に取り上げる問題は、新薬申請書類に関するデータ保護、先発医薬品に関する特許権消滅前の製造試験の例外、特許権消滅前の適法な販売開始(消尽を含む)、オレンジブックへの特許掲載手続を濫用した侵害訴訟、現金支払と参入遅延の合意を伴う侵害訴訟の和解である。

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28. TRIPs協定の締結をめぐる政治過程の分析-日米欧における製薬・コンピュータ産業を中心として-
西村 もも子
(財)知的財産研究所 平成18年度特別研究員

 本研究では、1986年に始まったGATTウルグアイ・ラウンドにおけるTRIPs協定の形成過程を、国際政治学の観点から検証している。TRIPs協定の締結における多国籍企業の影響力はしばしば指摘されるが、その政治過程を実際に検証している先行研究は少なく、また、その多くは米国に関する検証にとどまっている。本研究は、日欧を含む各国の企業と政府の関係を1970年代から検証し、そこでの政治過程とその変化が、当該協定の形成にいかなる影響を及ぼしたのかを分析している。また、特に、ウルグアイ・ラウンドと同時期に、日米欧企業が協力し、民間からの協定試案を提示した過程に注目し、企業が政府に圧力をかけるという従来型とは異なる新たな政治過程を抽出している。検証では、特に製薬、及び、コンピュータ産業に焦点を当て、医薬品特許、政府申請データの保護、コンピュータ・プログラムの保護範囲といった争点が、企業と政府間、企業間、政府間の交渉においてどのように議論されたのかを明らかにしている。

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