Contents | |
---|---|
巻頭言 |
|
佐々木 剛史 (Takeshi Sasaki) 〔トヨタ自動車株式会社 知的財産部長〕 | |
【特集】デザイン・ブランドを中心としたグローバルな知財保護戦略 | |
3 | クールジャパンとコンテンツ政策 |
中村 伊知哉 (Ichiya Nakamura) 〔慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授〕 | |
ポップカルチャーに代表される日本の文化や社会スタイルが「クールジャパン」として世界の評価を集めているが、産業としては伸び悩んでいる。政府はデジタル技術を駆使した海外展開策に力を入れるとともに、文化=コンテンツと技術=ものづくりの双方の力を発揮させる産業政策を講じつつある。長期的な土台作りと して、子どもの創造力を高める教育政策も求められる。 | |
10 | 立体形状の商標保護への挑戦 ― アメリカ及び欧州共同体における車両(部品)外形の事例を通じて ― |
|
報道機関の経済情報によれば、ある日本の大手自動車メーカーは、2012年上半期(4~9月)の世界販売台数が2年ぶりの世界一を記録した。日本の自動車メーカーは、従来に増して「ジャパンブランド」の牽引役であることにかわりはない。一方、自動車の「ブランド」を形成する一つの要素が「車両外形のデザイン」であるが、その外形デザインを意匠権として保護する方策に加え、商標権による保護が重要なツールとなる。そこで、本稿は、アメリカ・欧州共同体における車両外形デザインの「商標」としての関連事例を通じ、立体形状保護の現状を比較考察し、実務における参考情報と指針の提供を目的とする。 |
20 | 企業におけるブランド・マネジメント |
足立 勝 (Masaru Adachi)
〔米国ニューヨーク州弁護士〕 |
|
本稿は、企業に属する立場からブランド・マネジメントについて述べるものである。まず、ブランドの定義及び自社のブランドの明確化の重要性に言及した上で、ブランドと知的財産権の関係について検討する。その上で、ブランド・マネジメントの一環であるブランドの開発・権利化、使用、権利保護活動それぞれの活動において、企業が留意しておくべきことについて見解を述べる。なお、本稿は、筆者個人の見解を示したものであり、筆者が所属する組織・団体の見解ではない。 | |
27 | 立体商標の登録要件充足性に関する近年の知財高裁判決 ― Yチェア立体商標事件・知財高裁平成23年6月29日判決を中心に ― |
|
|
知財高裁平成19年6月27日判決がミニ・マグライトの立体商標につき、商標登録を認めるべきものとして以降、立体商標に関して注目すべき判決が続出している。その流れを継ぎ、本稿で中心的に採り上げる知財高裁平成23年6月29日判決(本判決)は、肘掛椅子の形状に係る立体商標について、商標法3条1項3号に該当するとしながらも、同法3条2項を適用し、使用による自他商品識別力の獲得を認めたものである。本判決は、商品自体の形状による立体商標の登録を認めた事例を付け加えるものとして、実務上重要な意義を有する。本稿では、立体商標の登録要件充足性に関する近年の知財高裁判決を整理しつつ、商標法3条2項の該当性判断を中心に、本判決を分析する。 | |
40 | 中国における効果的なデザイン保護戦略のあり方 |
|
|
近年、「世界の市場」たる中国の消費者の消費能力は向上してきているが、企業が中国で売り上げを伸ばしていくためには、商品の品質だけでなく、消費者にとって魅力的なデザインという点も相対的に重要になってきている。他方で、中国では、相変わらず、あらゆる知的財産の侵害が横行しており、特に、商品のデザインは比較的簡単に模倣することができるので、これを法律的に確実に保護していくことが企業の商品デザイン戦略の観点からも重要となる。また、デザイン盗用に係る訴訟も、近年、増加傾向にあり、知らずに他社のデザインに係る知的財産権を侵害して提訴され、デザイン変更を余儀なくされる、といったことが無いように注意することも重要である。こうした背景を踏まえて、本拙稿では、中国におけるデザイン保護に係る知的財産権法制度、企業の効果的なデザイン保護戦略のあり方を概説する。 | |
【寄稿・連載】 | |
50 | 米国審決取消訴訟における新証拠提出の許否 ― 合衆国最高裁判所2012年4月18日判決(Kappos対Hyatt事件)の解説 ― |
|
|
特許出願人は、米国特許法145 条による「審決取消訴訟」において、審判に提出していない証拠を提出することができる。この場合には、地方裁判所は、事実認定を一からやり直さなければならない。 | |
58 | WIPOから見た知的財産制度と公共政策の接点について |
|
|
イノベーション推進や国民健康増進などの公共政策目的と、知的財産制度の目標との接点は、衝突することがあり、最近の論点として重要である。知識社会の発展や技術革新が与える影響によって、その接点は、国内でダイナミックに変わってきたが、グローバルにも連関してきている。WIPO などの国際機関での議論を分析しながら、知的財産制度が、公共政策目的を達成するために、どのような接点を持ち、どのように発展していくべきかを論じる。 | |
65 | 「意匠」と「商標」の比較から見えてくるもの |
|
|
同じ知的財産法でも、意匠法は創作保護法と、商標法は信用保護法と言われているが、近時の技術革新やビジネス環境の変化に対応し、両者とも大きな変貌を遂げつつある。こうした状況を踏まえ、この両者について、制度の趣旨・目的、保護の客体、あるいは制度の組み立て等について比較・考察することによって、それぞれの制度を考える新たな視点を得、あるいは今後の制度設計を考える、よすがとすることができるのではないか。 | |
72 | 新たな指針は示されたのか ― プロメテウス米国連邦最高裁判決の検討 ― |
|
|
近年、米国ではビジネス方法や医療関連発明の特許対象性に関する判決が相次いでいるが、CAFC 判決が連邦最高裁で変更、破棄される例が目立ち、特許対象性の判断基準が確立したとは言えない状況である。本稿は、特許対象性に関する米国の判例の流れを概観し、プロメテウス連邦最高裁判決およびその影響について検討する。 | |
81 | 中国の法改正・判例紹介⑨ 公知意匠と区別される特徴が意匠の全体の視覚的効果に及ぼす影響 ― 君豪公司と佳芸家具廠との間の意匠権侵害紛争事件 ― |
|
|
89 第74回ワシントン便り | |
諸岡 健一 (Kenichi Morooka) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕 | |
94 知財研NEWS |