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目次PDF | 本号では、「グローバルな知的財産戦略」と題した特集を組んでおります。経済のグローバル化や新興国市場の拡大等を背景に、我が国企業のグローバル展開も進展しています。こうした中、我が国企業も従来の日米欧等の先進国における権利取得に加えて、中国や韓国、新興国においても積極的な権利取得を目指すなど、知財活動が活発化しています。 弊所は、昨年度、特許庁から「平成24年度 特許庁 知的財産国際権利化戦略推進事業」を受託し、我が国及び諸外国企業の最新の知財戦略の実態を調査・分析した上で、我が国企業の国際競争力を強化するための知財戦略の在り方を提言し、当該調査・分析結果及び提言を、我が国企業等へ発信するとともに、我が国特許庁に求められる施策・体制を検討するための基礎資料とすることを目的として報告書をとりまとめました。 この度発行致します「知財研フォーラム」第93号(春号)では、「グローバルな知的財産戦略」と題する特集を組み、上記事業に委員等として参加頂いた先生方にご執筆頂き、国内の知財関係者をはじめとする読者に、我が国の総合的・戦略的な知財戦略の強化の重要性が啓発できるような特集となることを企画しました。 |
Contents | |
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巻頭言 |
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上柳 雅誉 (Masataka Kamiyanagi) 〔セイコーエプソン株式会社 業務執行役員常務 知的財産本部長〕 | |
【特集】グローバルな知的財産戦略 | |
3 | グローバルな知的財産戦略について |
中村 道治 (Michiharu Nakamura) 〔独立行政法人科学技術振興機構(JST) 理事長〕 | |
経済のグローバル化が急速に進展し、経済活動は国境なきものとなってきている。今回の「グローバル知財戦略会議事業」では、世界各国の企業に対して大規模なヒアリングが行われ、知財戦略の大きな流れと現在の課題が浮かび上がった。中でも、知財の調達と活用、新興国の成長マーケットを見据えた知財のグローバル出願、そして大学において行われる知財に関わる人財の育成が急務である。 | |
7 | 標準化戦略と融合した知財戦略は国際競争力を高めるのか |
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本稿は、特許庁委託事業「グローバルな知財戦略に関する調査研究事業」のうち「国際標準化と知的財産の融合戦略」について特徴的事項を解説する。グローバル競争力を高めた企業は、自社特許と技術標準の戦略的関係付け、標準化部門・知財部門の連携、担当役員の設置で顕著な特徴があることが統計データで分かった。調査結果をもとに、標準化と知財の融合が競争力を生む条件を考察した。 |
15 | グローバルな知財の調達 |
吉原 拓也 (Takuya Yoshihara) 〔日本電気株式会社 知的財産本部〕 | |
経済がグローバル化し、事業のスピードが速くなった。知財の調達もグローバル化しスピードを速める必要があるが、日本企業は自社内での調達が中心で対応が遅れている。知財調達のグローバル化、社外からの調達が進まない理由を考察し、今後日本企業が取るべき行動について述べる。 | |
21 | 今後の特許及び知的財産の活用について |
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知的財産が経営資源として注目されている。日本企業の中にも知的財産を積極的に活用する企業もあるが、総じて知的財産活用の意識は欧米に比べ低い。本稿では、多様な知的財産の活用手段を説明し、知的財産活用のあらゆる手段が交渉材料になり、それぞれの文化(国や地域ごと、技術分野ごと、知的財産権ごと、企業ごと)に合わせた戦略が必要となること、経営トップが知的財産の活用に関与して迅速な判断や対応を行う必要があること及びそのための人材を育成することを提言する。 | |
27 | グローバルな知財戦略に関する調査研究事業の概要 |
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本事業では、我が国及び諸外国企業の最新の知財戦略の実態を調査・分析した上で、我が国企業の国際競争力を強化するための知財戦略の在り方を提言し、当該調査・分析結果及び提言を、我が国企業等へ発信するとともに、我が国特許庁に求められる施策・体制を検討するための基礎資料とすることを目的として、調査研究が行われた。本稿は、その概要を紹介するものである。 | |
【寄稿・連載】 | |
36 | 多能性幹細胞を用いる再生医療の生命倫理 |
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山中教授によるiPS細胞の作成は、再生医療に大きな展開をもたらし、難病の治療が現実のものとなりつつある。しかし、iPS 細胞及びヒトES 細胞については、様々な倫理的問題が含まれている。本稿では、再生医療の実現を見据えつつ、受精胚及び人クローン胚からのヒトES細胞とiPS細胞の研究及び臨床利用における生命倫理の課題を概括的に検討する。 | |
44 | 中国の法改正・判例紹介⑪ 商標の権利付与における先行商号権との抵触に関する審査判断 ― TDK株式会社が商標審判委員会を訴えた商標異議審判審決取消行政訴訟事件 ― |
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中国の商標制度は、世界の多くの国と同様に、先願主義・登録主義を採用している。先願主義・登録主義の状況において、近年中国では、商標権の冒認出願が多発し、大きな問題となっている。外国の有名な商標を先取り出願・登録する以外に、特に、有名企業の商品ブランドや社名などが、知らぬ間に第三者により商標として先取り出願・登録されるケースも少なくない。本件において、TDK株式会社は、他社の冒認出願に対し、4年間の歳月をかけ異議申立、異議裁定不服審判、行政訴訟一審及び二審を経て、ようやくその登録を阻止できた。本稿では、本件に基づいて、主に、商標の権利付与における先行商号権との抵触及びそれと関連する商品類否の審査判断基準を分析するが、先行商号権を利用して商標冒認出願を阻止する条件に対する読者の理解を深める一助になれば幸いである。 | |
51 | ウルグアイ・ラウンド協定法による外国著作物に対する著作権付与と合衆国憲法 ― Golan v. Holder, 565 U.S.__, 132 S.Ct. 873(合衆国最高裁2012年1月18日判決)の評釈― |
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合衆国最高裁は、パブリック・ドメインにあった外国の著作物についてウルグアイ・ラウンド協定法により著作権を付与したことが合衆国憲法に違反しないとの判断をした。本稿は、その解説及び評釈である。 | |
58 | 判例研究⑨ 特許法第102条第2項の適用要件 ― 知的財産高等裁判所特別部平成25年2月1日判決( 平成24年(ネ)第10015号 特許権侵害差止等本訴、損害賠償反訴請求控訴事件) ― |
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知財高裁特別部(大合議)は、特許権者による当該特許発明の実施は特許法第102条第2項の適用要件ではないと明示した上で、「特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合」には同項の適用が認められるとした。もっとも、いかなる事実関係が存在すれば上記場合に当たるか、いかなる事実関係が同項による推定が覆滅される事情に当たるかなどについて、本判決は明確にしておらず、これらは今後に残された課題である。 | |
70 第76回ワシントン便り | |
諸岡 健一 (Kenichi Morooka) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕 | |
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