フォーラム101号
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知財研フォーラム 2015  Summer Vol.102
特集 知財研フォーラム誌100号によせて
■2015年8月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
フォーラム101号 目次(縮小画像) 目次PDF
 本号では、「特許権侵害訴訟における現状と考察」と題した特集を組んでおります。 知的財産権の資産としての活用は、企業の知財戦略のみならず事業戦略の観点からも重要であり、他者との協業やM&A等の交渉において重要な位置づけを占めるに至っております。
 一方で、知的財産権本来の役割である独占権や排他権を追求する侵害訴訟に関しましては、我が国の特許権侵害訴訟はここ数年200件前後の水準で推移しております。訴訟件数は米国と比較すると著しく低いものの、この点に関しては国民性をはじめとする様々な要因が指摘されております。
 このような状況の中で、我が国の特許権侵害訴訟は、訴訟コストの低廉性や判決の予見可能性の点で評価されているものの、証拠収集手続きにおける強制力の不足 、損害賠償認定額の低廉性、いわゆるダブルトラックによる権利の安定性への疑問 など、企業からは訴訟を提起する上での懸念を指摘する声もあがっております。
 そこで、本特集では、我が国の特許権侵害訴訟における現状について、企業又はその弁護士、特許庁、裁判所など様々な視点からご意見を述べていただくことと致しました。是非ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。
Contents
巻頭言
豊田 秀夫 (Hideo Toyoda)
〔パナソニック株式会社 知的財産センター 所長〕
【特集】特許権侵害訴訟における現状と考察
3 一企業の視点から見た特許権侵害訴訟
  宮内 弘 (Hiroshi Miyauchi)
〔株式会社 東芝 研究開発統括部 首席主監(元 知的財産部長)〕
企業は時として紛争解決の手段である特許権侵害訴訟の原告にも被告にもなり得る。原告は何らかの目的を持って訴訟を仕掛ける。一方、被告は先を予見しながら訴訟に対応する。一企業の視点から、日本における特許権侵害訴訟に関連して、①裁判地・裁判所の質、②証拠開示制度、③無効判断、④訴訟下での和解、⑤仮処分手続、⑥損害賠償額につき、米国制度との比較や小生の意見も交え簡単に紹介する。
7 米国との比較による日本における特許権侵害訴訟についての雑感
 
矢作 隆行 (Takayuki Yasaku)〔ホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業(執筆時) 矢作外国法事務弁護士事務所 代表 外国法事務弁護士(原資格国法:米国ニューヨーク州) 弁理士(特定侵害訴訟代理業務付記)〕
米国における特許権侵害訴訟に携わってきた者として、日本の特許権侵害訴訟に関与させて頂く機会を得た際に感じた雑感、例えば、訂正制度、秘密保持命令制度、差止請求権、方法特許の保護などについて、感じたことを述べる。
11 特許権侵害訴訟制度の改正論議について
  伊原 友己 (Tomoki Ihara)〔三木・伊原法律特許事務所 弁護士〕
改正論議の前提として、我が国の特許権侵害訴訟では、原告勝訴率は2割しかなく、特許権者の保護が十分ではないという指摘は訴訟の実態にはそぐわず、勝訴率は、原告勝訴的和解をも勘案した実質勝訴率が4割~5割であるという実態をもとに議論すべきである。特許権侵害訴訟における無効の抗弁は、適切な特許権行使及び技術的範囲の確定のために必要な法制であるから制限するべきでない。証拠収集手続の拡充は検討に値する。損害賠償額の引き上げは、不法行為法制全体との調和が図られるべきである。
20 特許侵害訴訟における権利の安定性向上に向けた現状と課題
  澤井 智毅 (Tomoki Sawai)〔特許庁 審査第二部長(前 審査第一部 調整課長)〕
沖田 孝裕 (Takahiro Okita)〔特許庁 審査第一部 調整課 課長補佐〕
貝沼 憲司(Kenji Kainuma)〔特許庁 審査第一部 調整課 課長補佐〕
世界ではイノベーションを喚起しうる知財システムとすべく制度間競争が行われており、米欧中などでは特許権を尊重し権利の安定性を考慮した制度となっている。 一方、我が国では、権利が事後に無効になりやすく、特許権者に不利な制度となっており、知財推進計画2015において権利の安定性を向上させる方策について検討すべきとされた。そこで、本稿では権利の安定性の必要性等を紹介しつつ、特許法104条の3等の制度の在り方について検討を行う。
31 我が国の知的財産関係訴訟の現状について
― 特許権侵害訴訟を中心に―
  品田 幸男 (Yukio Shinada)〔最高裁判所 事務総局行政局 第一課長兼第三課長〕
松川 充康 (Mitsuyasu Matsukawa)〔最高裁判所 事務総局行政局付〕
知財紛争処理システムの更なる活性化のため、フェアな情報に基づく建設的議論は歓迎すべきことだが、一面的な数値・情報に基づく偏った現状評価は、その目的をかえって阻害しかねない。本稿は、各種統計等を踏まえた我が国知財訴訟の現状紹介を行うとともに、各国の制度・運用面の差異を踏まえない単純な数値比較の危険性をその理由とあわせて整理する。その上で、裁判所が、知財分野において今後果たすべき役割について、国際的動向も踏まえた展望を試みる。
【寄稿・連載】
44 判例研究⑱
商標無効審判の審決の確定による一事不再理効が及ぶ客観的範囲
― 知財高裁平成26年3月13日判決(判時2227号120頁、①事件判決)/同平成26年2月5日判決(判時2227号109頁、②事件判決)―
 
田中 昌利(Masato Tanaka)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
鵜木 崇史(Takashi Unoki)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
商標法56条1項が準用する特許法167 条の定める一事不再理効が及ぶ客観的範囲、すなわち同条のいう「同一の事実及び同一の証拠」について、結論として肯定と否定の2つの興味深い判決が近接して出された。特に、①事件判決は、一事不再理効が肯定されたという点で注目すべき判決といえる。上記2つの判例の分析を通じて、一事不再理効の客観的範囲を画する「同一の事実及び同一の証拠」について検討する。なお、平成23年法律第63号により、一事不再理効の主観的範囲が改正されたが、客観的範囲に関する上記2つの判決のもつ意味は、改正前後で変わるものではない。
54 イタリアの知的財産制度
― 我が国制度との対比から見る特徴及びその変容について ―
 
吉川 景司(Keishi Yoshikawa)〔弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所 アソシエイト 弁護士〕
宍戸 一樹(Kazuki Shishido)〔弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所 パートナー 弁護士〕
タランティーノ・ クリストーフォロ(Tarantino Cristoforo)〔イタリア・ピサ弁護士会所属 イタリア司法修習生〕
イタリアの知的財産制度は、我が国知的財産制度との類似性もあるが、我が国企業ないし国民が留意すべき相違点も多い。また、近年、イタリアの知的財産制度はダイナミックに変化しており、被疑侵害者側が利用してきたトルピード戦略に関する裁判管轄の解釈についても、裁判所の立場は揺れ動いている。発効が間近に迫る欧州統一特許裁判所制度及び欧州単一効特許制度による影響をはじめ、今後の動向が注目される。
61 中国における知財専門裁判所の概要と今後の展望
  分部 悠介(Yusuke Wakebe)〔IP FORWARD法律特許事務所 代表弁護士・弁理士
IP FORWARD China(上海擁智商務諮詢有限公司)董事長・総経理〕
近年、中国では、知財訴訟の件数が年々増加し、米国を抜いて「世界一の知財訴訟大国」となっている。こうした中、的確かつ効率的に知財紛争を処理できるようにするため、2014年末、専門性の高い知財訴訟を中心に取り扱う「知識産権法院」が、北京、上海、広州の3都市にて設立された。今後、日本企業としては、原告として権利行使するだけではなく、被告として対応せざるを得ない場面も増えることが予想される中、同法院について理解することは肝要であるので、本稿にて、その概要、今後の展望について俯瞰する。
67 メキシコ商標制度に関する検討
― 質の向上に向けた問題点の提示 ―
 
カラペト・ホベルト(Roberto Carapeto)〔ブラジル弁護士(Licks特許法律事務所)早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP) リサーチコラボレータ「ブラジル知財」ウェブサイト管理者〕
メキシコ市場に参入を図る企業にとっては、特に現地でパートナーを探すことが有利的だということを考慮すると、特許よりも先に商標を確保することが重要といえる。そのため、メキシコにおける商標権に関わる制度をより理解するため、本稿において商標の権利化及び権利行使についてのいくつかの問題点を解説する。
75 アメリカ合衆国最高裁判例評釈①
米国特許侵害訴訟における明確性の基準
Nautilus, Inc. v. Biosig Instruments, Inc.,134 S. Ct. 2120(2014)(合衆国最高裁2014年6月2日判決)の解説
 
泉 卓也(Takuya Izumi)〔特許庁 審判部審判課審判企画室 課長補佐〕
合衆国最高裁は、明確性欠如を根拠とする特許無効の抗弁において要求される明確性の程度について、連邦巡回区控訴裁判所の「解決できないほどの曖昧さ」という基準を修正し、「合理的な確からしさ」という基準を示した。本判決に至るまで、米国では明確性の程度をめぐって様々な議論がされてきたところ、この総括的な判決はクレームの公示機能の確保を考える上で意義深いものである。
83 アメリカ合衆国最高裁判例評釈②
米国特許訴訟における弁護士報酬の敗訴当事者負担の動向
 
山口 裕司(Yuji Yamaguchi)〔ユアサハラ法律特許事務所 弁護士〕
2014年4月29日に下されたOctane Fitness, LLC v. ICON Health & Fitness, Inc.事件とHighmark Inc. v. Allcare Health Management System, Inc.事件の米国連邦最高裁判決は、いずれも弁護士報酬の敗訴当事者負担に関する連邦巡回区控訴裁判所の先例を覆す判断を行った。本稿では、両判決の概要を紹介すると共に、両判決が近時の米国特許訴訟に与えた影響について解説する。
   91 第85回 ワシントン便り
  今村 亘 (Wataru Imamura)〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
     知財研NEWS

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