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目次PDF |
本号では、「国内自動車産業の知財戦略」と題した特集を組んでおります。 自動車は、ガソリン車からハイブリッド車/クリーンディーゼル車/小排気量ターボ車が主流になり、将来は環境性能でも優れた電気自動車(EVやPHV)や燃料電池車(FCV)に移行すると予測されております。更に、爆発的に普及しつつある自動ブレーキに代表される安全装備は、数年先の自動走行を予感させるものであります。他方、自動車の著しい高性能化と高機能化の中で、解決すべき諸課題も生じております。 このような状況で、技術と一体となった知的財産権は、当然ながら重要な位置づけを占めており、特許の満了に伴う他社参入と思われる事例も見られております。その一方で、特許実施権を無償提供する会社も現れております。 我が国の基幹産業である自動車産業の知財戦略は、知財のオープン・クローズ戦略にとどまらず、アライアンスなどの事業戦略と密接に関係するものであり、従前以上に重要な局面を迎えております。 そこで、今回は、国内自動車産業の知財戦略について、自動車会社、Tier1サプライヤー、弁護士、大学の視点からご意見を述べていただくことと致しました。是非ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。 |
Contents | |
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巻頭言 |
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別所 弘和 (Hirokazu Bessho) 〔本田技研工業株式会社 知的財産部長〕 |
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【特集】国内自動車産業の知財戦略 | |
4 | ブランド構築における知的財産部門の役割について |
安藤 誠一 (Seiichi Andou) 〔長安マツダ汽車有限公司 技術開発センター長(元 マツダ株式会社 知的財産部 部長)〕 |
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自動車業界は他業界と同様、激しいグローバル競争の渦中にある。その中で生き残るためには、オンリーワンのブランドを構築することが有力な戦略の一つである。中堅自動車メーカーであるマツダは、規模の力で生き残ることはできず、お客様との感情的なつながりを強固にし、お客様に選ばれる独自の価値に基づく車づくりを行う戦略を選択している。ここでは、このブランド構築の戦略における知的財産部門の役割について述べたい。 | |
10 | 自動車メーカーが直面する課題と知的財産戦略 |
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自動車業界は従来より「環境」と「安全」に関する課題に取り組んでいるが、近年のグローバルでの経済発展に伴い、その重要性はさらに高まっている。また、クルマの「電動化」ならびに「知能化」が進むにつれ、自動車完成車メーカーが取り組む技術領域や提携パートナーも拡大している。本稿では、これらの課題に対する日産自動車の事業、開発、知財戦略について紹介する。 |
14 | 自動車部品企業における知財活動について |
鈴木 嘉浩 (Yoshihiro Suzuki) 〔株式会社デンソー 知的財産部長〕 | |
自動車産業においては、今後ますます「環境」「安心・安全」分野に、新たな技術革新が必要となってくる。例えば、「安心・安全」分野での自動運転においては、つながる技術、センシング技術、HMI等が重要となり、新たな技術の、新競合者との競争が激化してくる。このような状況の中で、当社は、めりはりをつけた活動を目指して、技術部及び事務所、国内外グループ会社の連携強化を行っており、今後の課題も含めて紹介する。 | |
18 | 自動車産業におけるNPE訴訟の現状と理解 NPE Lawsuits Against the Automobile Industry: Background and Strategy for Litigation in the United States |
ライアン・ゴールドスティン (Ryan S. Goldstein) 〔クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所 東京オフィス代表/パートナー〕 |
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世界において確固たる地位を築いて久しい日本の自動車産業。しかし、海外でのビジネスの機会が増加するのに伴い、紛争に巻き込まれるケースが相次いでいる。昨今、特にNPE、いわゆるパテント・トロールは自動車産業特有の複雑な事情を狙い訴訟を起こしている。本稿では、NPE訴訟における自動車産業特有の特徴と、米国訴訟における訴 訟戦略及び備えるべき対策について報告する。 | |
26 | 走行情報のプライバシーと製造物責任と運転者の裁量 |
平野 晋 (Susumu Hirano)〔中央大学 総合政策学部 教授 大学院総合政策研究科 委員長〕 | |
運転補助・自動運転技術の目覚ましい発達は、感知・蓄積した走行情報(ビッグ・データ)の財産権の在り方や、プライバシーを犠牲にして向上する安全性の在り方、更には完全自動運転が望ましいのか又は運転補助に止まるべきか等の諸問題を惹起している。そこでつい先頃、総務省の有識者会議でIoTとビッグ・データの利活用と諸問題を取りまとめた中央大学の平野晋教授に、これらの諸問題を紹介してもらう。 | |
【寄稿・連載】 | |
33 | 平成27年改正不正競争防止法の概要 |
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41 | 回 想 営業秘密と不正競争防止法 (その1) |
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営業秘密の差止請求制度創設25周年にあたり、法案作成者が当時を3回の連載で紹介する。第1回は、昭和63年11月の知的財産政策室発足時の回想から始まる。筆者は、初代専任課長補佐として知財室に着任し、知財研の設立等に取り組む。ウルグアイラウンドTRIPsで交渉項目となったトレード・シークレットについても研究会を立ち上げ勉強を開始。ところが、平成元年夏に着任した新局長が、次期通常国会に法案提出の方針を示し、事態は急展開。産構審で検討を開始したが、産業界から反対の大合唱。最高裁や特許庁まで もが反対意見を表明し、四面楚歌となった。 | |
48 | 判例研究⑲ パブリック・ドメインの寄与度の考慮 ― 東京地方裁判所平成27年3月24日判決(平成25年(ワ)第31738号)(第1事件)・東京地方裁判所平成27年3月16日判決(平成26年(ワ)第4962号)(第2事件)― |
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パブリック・ドメインとなった映画と保護期間内にある日本語字幕及び吹き替え音声がともに複製収録された、日本語字幕及び吹き替え音声にかかる著作権を侵害するDVDについて、損害の算定にあたって当該映画の寄与度を理由に寄与度減額が認められるかという論点について、2つの判決が出された。2つの判決は異なる理由でパブリック・ドメイン部分の寄与度の考慮を排斥したが、寄与度の考慮においてパブリック・ドメインであることを特殊に扱う理由はなく、正に当該パブリック・ドメイン部分がパブリック・ドメインであることに由来する特殊事情(パブリック・ドメイン部分は権利者の許諾を要せずに複製可能であることから、当該DVDの原価を低く抑えることができ、従って低廉な販売価格の設定が可能となるという事情)を踏まえた上で、淡々とその寄与度を算出すれば足りたものと思われる。この観点から、いずれの判決についても、その寄与度の判断には疑問が残ると言わざるを得ない。 | |
56 | 韓国改正・判例紹介⑩ 韓国不正競争防止法上の不正競争行為一般条項の導入と運用 |
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昨年から施行されている韓国の改正不競法には、これまでの不正競争行為の類型9種類に加え、特定の類型に属さない一般的不正競争行為条項(いわゆる「catch all条項」)が新設された。この新設条項を適用して先駆的事業者の権利保護をトレードドレスとして認めた事例を紹介するとともに、この新設条項の今後 の運用について考察する。 |
63 | 中国の法改正・判例紹介⑮ 電子商取引分野における知的財産権の新動向 |
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電子商取引は、中国ではいまだ初期の発展段階にあり、低コストと高利潤を追求するためのインターネットにおける模倣品の製造と販売は、後を絶たない。インターネット取引の発展につれて、電子商取引分野の知的財産権侵害問題は日増しに深刻になっている。本稿では、インターネット取引における知的財産権侵害の現状、中国の電子商取引に係る法律・法規及び司法実務上の具体的な方法から、中国電子商取引分野における知的財産権の現状を詳述するものとする。第三者取引プラットフォームの職責及び侵害責任の負担に対する法律の方向性を分析し、かつ、インターネット侵害事件の対応方法と有効な苦情の提出経路等について、知的財産権権利者へのいくつかの提案を述べる。 | |
71 第86回 ワシントン便り | |
今村 亘 (Wataru Imamura)〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕 | |
76 知財研NEWS |