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目次PDF |
本号では、「地方/中小企業の産学・産産連携の知財活用」と題した特集を組んでおります。 知的財産推進計画2015の重点3本柱の一つとして「地方における知財活用の推進」が掲げられており、その中では、中小企業が自らの知的財産を磨き、事業戦略を踏まえた知財戦略により権利化・標準化・秘匿化し、効果的にビジネスにおいて活用することが中小企業の事業と地域経済の発展に結び付くと考えられると述べられています。そして、今後取り組むべき施策としては、①中小企業の知財戦略の強化、②地域中小企業と大企業・大学との知財連携の強化、③農林水産分野における知財戦略の3つが提言されています。 産業界でも、より迅速かつ効率的にイノベーションを創出すべきという観点から、大学と民間企業との「産学連携」に加えて、大企業と中小企業との「産産連携」が注目されています。このように、地方・中小企業における知財活用の推進は、今後の我が国の産業にとって非常に重要な位置づけにあります。 そこで、今回は、地方/中小企業の産学・産産連携の知財活用について、産産連携、産学連携、知財支援の視点から意見を述べていいただくことと致しました。是非ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。 |
Contents | |
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巻頭言 |
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田中 稔一 (Toshikazu Tanaka) 〔三井化学株式会社 相談役〕 | |
【特集】地方/中小企業の産学・産産連携の知財活用 | |
4 | 「川崎モデル」と称される中小企業伴走型支援の生成と展開について |
伊藤 和良 (Kazuyoshi Ito) 〔川崎市 経済労働局長〕 | |
本稿では、「川崎モデル」として、全国から注目を集める本市の知財交流事業の内容と、その前提となる「川崎市知的財産戦略」の紹介を行い、知財交流事業が本市の産業構造の特徴を踏まえ、中小企業振興施策の一環として考案し、創設したものであることを明らかにしていく。そのうえで、スキルを持ったコーディネータの存在が不可欠である点と、「川崎モデル」の広域展開による地域創生への思いを述べていく。 | |
14 | 産産連携による特許技術移転 |
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本稿では、最初に我々がNPO法人産業技術活用センターを設立した背景を、次に我々の産産連携の柱である①大企業の技術・特許の中小企業への移転活動、②中小企業 技術の大企業へのマッチング支援活動を述べる。併せて本センターのもう一つの機能である、メンター事業について、メンターを経営相談役のみならず、シニアコーディネータとして産産連携の肝として活用していることを述べる。 |
22 | 産学官連携活動と地域創成への取り組みと課題 ― 大学発イノベーションの地域への展開と課題 ― |
小暮 純生 (Sumio Kogure) 〔山梨大学 客員教授〕 | |
少子化、過疎化の流れのなかで、疲弊している地域を再生、活性化するためには、地域内産業の活性が重要であり、大学等の地域の研究機関発のイノベーション、さらには「知」を活かした連携が期待され、既に取り組みも動き出している。このような取り組みをより効果的、実体化するための方策について、私見ではあるが、事例を踏まえながら考察を加えてみたい。 | |
28 | 大学発知的財産を活かしたシンチレータ結晶事業の展開 |
鎌田 圭 (Kei Kamata) 〔株式会社C&A 代表取締役社長 東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授〕 |
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株式会社C&Aは、東北大学金属材料研究所/未来科学技術共同研究センターの研究成果を活用し、「材料10年説を覆す」「大学の研究成果を基に製品を創造し、人類の幸福に貢献する」等の理念に基づき、東北大学金属材料研究科の吉川彰教授をはじめとするメンバーとともに2012年11月に設立した東北大学発ベンチャー企業である。本稿では、C&Aの大学発知的財産を活かした産学連携研究と、シンチレータ結晶関連事業の展開について紹介する。 | |
33 | 中小企業における知財戦略強化支援について |
鯉沼 篤史 (Atsushi Koinuma)〔特許庁 総務部普及支援課支援企画班 支援企画第一係長〕 | |
「地域活性化」、「我が国の産業競争力強化」という観点から、中小企業における知財戦略を強化していくことが重要である。本稿は、特許庁が、「地方創生」と「海外展開」といった国の主要な政策課題に沿いつつ、中小企業の知財戦略強化に向けた「普及」と「支援」を両輪に取り組んでいることをご紹介する。 | |
【寄稿・連載】 | |
40 | 回 想 営業秘密と不正競争防止法 (その2) |
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法一条の方針を転換し、行為類型の明確化することで産業界の反対は沈静化した。背任型の構成要件や善意取得者救済制度等の法律的な課題を解決したところで、思いがけない課題が発生する。一つは、法務省から今回の法改正が民法の領域に踏み込んでいるのではないかという指摘。もう一つは、通商政策局から創設しようとしている営業秘密の差止請求制度が国際的なスタンダードにかなっているかという指摘だった。これらのハードルも乗り越え、3月に産構審報告書をとりまとめ、GWを返上して内閣法制局審査を行い、漸く法律案が固まった。 | |
47 | 判例研究⑳ 特許法167条(平成23年改正後)が定める一事不再理効が及ぶ客観的範囲 ― 知財高裁平成27年8月26日判決 (裁判所ウェブサイト(平成26年(行ケ)第10235号審決取消請求事件))― |
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特許無効審判の審決の確定による一事不再理効を定める特許法167条は、平成23年法律第63号により、その主観的範囲が変更された。本判決は、改正後の特許法167 条が定める一事不再理効が及ぶ客観的範囲、すなわち同条にいう「同一の事実及び同一の証拠」の意義について、一般論を示した裁判例である。 | |
55 | 中国知財訴訟の実務 ― 特許権/商標権侵害訴訟を中心に― |
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中国では、商標、特許ともに、近年、出願・登録件数、伸び率ともに世界一の水準で増加し続ける中、日本企業が、原告として訴訟提起することに加え、被告として提訴される立場に立つことも増えることが予想される。本稿では、裁判例等、最近の動向を踏まえ、中国特許権/商標権侵害訴訟実務のポイントについて解説する。 |
63 | アルゼンチンにおける知的財産制度と特許の留意点 |
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2015 年12月10日から、アルゼンチンでは新しい政権が始まった。それによって、様々な期待ができるようになった。改めて経済発展と工業化に進むと予想されるアルゼンチンでは、知的財産、特に特許に関してどのような問題があるであろうか。本稿では、アルゼンチンの知的財産制度の全般を紹介した後、特許制度とその留意点について解説する。 | |
71 | アメリカ合衆国最高裁判例評釈 著作権侵害を理由とする請求に対してlachesの抗弁を適用することの可否 ―Petrella v. Metro-Goldwyn-Mayer, Inc., 572 U.S._( 2014)合衆国最高裁2014年5月19日判決の評釈 ― |
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【判示事項】 1 著作権侵害を理由とする損害賠償請求に対してlachesの抗弁を適用することの可否 2 著作権侵害を理由とする衡平法(エクイティ)上の請求に対してlachesの抗弁を適用することの可否 【判決要旨】 1 著作権侵害を理由とする損害賠償請求に対してlachesの抗弁を適用することはできない。 2 著作権侵害を理由とする衡平法(エクイティ)上の請求に対しては、著作権法に規定する3年の出訴期間制限(statute of limitation)内に提起されたものであっても、特段の事情がある場合には、lachesの抗弁を適用して救済手段を制限し得る。 |
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79 第87回 ワシントン便り | |
今村 亘 (Wataru Imamura)〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕 | |
86 知財研NEWS |