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目次PDF |
当研究所は、2016年4月1日をもって一般社団法人知的財産教育協会と合併し、一般財団法人知的財産研究教育財団となり、知的財産研究所はその一部門として活動を続けることになりました。本号は新組織としての発足後第一号として、巻頭言を中山信弘会長が執筆し、当研究所の歴史や合併の経緯を振り返るとともに、今後の新組織への期待について述べさせていただきました。 また、寄稿としては、最近注目されている医療分野の知的財産保護、および著作権関係についての解説・論説記事を掲載させていただくことと致しました。是非ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。 |
Contents | |
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巻頭言 知的財産の新たな船出 ―知的財産研究所と知的財産教育協会の合併に際し― |
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中山 信弘 (Nobuhiro Nakayama) 〔一般財団法人知的財産研究教育財団 会長 / 東京大学 名誉教授〕 |
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【寄稿】 | |
3 | 日本医療研究開発機構における知的財産の取り組み ―ファンディングエージェンシーにおける知的財産部― |
天野 斉 (Hitoshi Amano) 〔国立研究開発法人日本医療研究開発機構 知的財産部長〕 | |
医療分野における研究開発の司令塔機能創設の一環として、基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進・成果の円滑な実用化及びそのための環境の整備を総合的かつ効果的に行うため、昨年4月に日本医療研究開発機構が設立され、実用化に向けた支援を行うための知的財産部が設置された。本稿では、新機構の設立経緯、組織とミッション、そしてファンディングエージェンシーとしては初めてとなる 知的財産部の取り組みについて紹介する。 | |
12 | TPPにおける医薬品の知的財産保護を強化する制度の導入 |
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TPP協定において、医薬知財保護に関しては、第18章・第F節特許及び開示されていない試験データその他のデータ・第C款医薬品に関する措置において、(Ⅰ)医薬特許期間延長制度(第18.48条)、(Ⅱ)新薬データ保護制度(第18.50条、第18.51条)、(Ⅲ)特許リンケージ制度(第18.53条)の3制度が規定されている。本報では、まず、総論として、国際条約上の医薬知財保護とTPP協定の関係、日本の現行制度の状況を概観したのち、各論として、TPP協定における上記(Ⅰ)~(Ⅲ)の内容を紹介し、最後に、それらが医薬品産業に与える影響について考察する。 |
18 | TPPと著作権実務へのインパクト |
福井 健策 (Kensaku Fukui) 〔骨董通り法律事務所 代表パートナー 弁護士〕 岡本 健太郎(Kentaro Okamoto) 〔骨董通り法律事務所 弁護士〕 |
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TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が署名され、関係法令の一つとして著作権法改正案が提出された。本稿では、主な内容である、①保護期間の延長、②著作権等侵害罪の一部非親告罪化、③アクセスコントロール規制、④配信音源の二次使用料請求権及び⑤法定損害賠償制度の概要を説明するとともに、これらが著作権実務に与え得るインパクトについて検討する。 | |
27 | 回想 営業秘密と不正競争防止法 (その3-完-) |
横田 俊之 (Toshiyuki Yokota) 〔独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) ニューヨーク事務所長 (元 通商産業省 産業政策局 知的財産政策室 課長補佐)〕 |
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内閣法制局審査で条文案が固まり、各省折衝及び与党プロセスに移る。通産省がこの法案を所管する根拠をどのように説明するかがポイントとなったが、明治44年の農商務省策定の不正競争防止法草案等で煙に巻く作戦が奏功する。いくつかのハプニングがあったものの、国会審議も無事に乗り切り、平成2年6月22日に法案は参議院本会議で成立する。平成7年、産業政策局に再び着任した筆者は、不正競争防止法に独禁法違法類型の差止請求制度導入を企図して、民事救済制度研究会を立ち上げる。 | |
【連載】 | |
35 | 判例研究㉑ 商標権の不使用取消審判請求における「使用」の意義 ― 知的財産高等裁判所平成27年11月26日判決(平成26年(行ケ)10234 号)・裁判所ウェブサイト(アイライト事件)― |
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商標権の不使用取消審判請求(商標法50条)における「使用」については、商標権侵害が問題になる場合と同様に、出所表示機能を果たす「商標的使用」を意味するとする見解が従前、多くの裁判例で採用され、学説でも通説的であったが、本判決は「商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではない」と異なる見解を示した。「商標的使用」の概念は、平成26年商標法改正により、商標権の効力が及ばない場合について定める商標法26条1項6号として取り込まれたため、同改正後の不使用取消審判と商標的使用の関係をどう考えていくべきかは、解釈論上、争いがある。そのような状況下で、知財高裁が、商標法50条における「使用」の意義について明示的に述べたという点で、重要な裁判例である。 | |
46 | 韓国改正・判例紹介⑪ セルフ給油機関連特許紛争事例の紹介 ― 販売決済方法特許の均等/間接侵害を認めた事例 ― |
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クレジットカード決済方法に関する方法特許の均等範囲にある方法を使用するガソリンスタンドのセルフ給油機に対して、利用者の選択により均等範囲にある方法を使用する場合と使用しない場合があるにもかかわらず、「のみ要件」を満たすとして間接侵害を認め生産・販売の差止めが命じられた事例。 | |
53 | 中国の法改正・判例紹介⑯ 中国における意匠権失効後の権利保護の可能性に関する研究 |
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工業製品の意匠が、同時に複数の知的財産権による保護を受けられる可能性がある。意匠権失効後、元来享有していたその他の権利もそれに伴って喪失するか、権利者がその知的財産権を主張できるか、また、権利の主張過程において意匠権失効による影響や制限があるかについて、本稿では事例と結び付け、失効した意匠権の他の知的財産権による保護に係る可能性を検討した上で、留意点についても指摘する。 |
61 | アメリカ合衆国最高裁判例評釈① 行政庁による表示規制と民事訴訟を通じた不正競争の被害救済との関係 ― 合衆国最高裁2014年6月12日判決の解説 ― |
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本件訴訟においては、行政庁によるFood, Drug and Cosmetic Act(食品、薬品及び化粧品法(略称:FDCA)。本法は連邦法である。)に基づく表示規制と、不正競争に関して競合相手からの民事訴訟を認めるLanham Act(Lanham法。本法も連邦法である。)に基づく被害救済との関係が問題となった。FDCAに基づき包括的な規制がされている食品・飲料のラベルの表示に関する分野について、Lanham法に基づく被害救済を求めることができるか否かにつき、第一審および原審の判断と、最高裁判所の判断が分かれたケースであり、また、我が国の法制度との比較の観点からも興味深いケースであると思われる。 | |
69 | アメリカ合衆国最高裁判例評釈② 米国特許における発明の保護適格性の判断基準 ― Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int’l, 573 U.S. _ (2014) 合衆国最高裁2014年6月19日判決の評釈と最近の審査実務の状況等 ― |
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2014年に米国連邦最高裁で出された、発明の保護適格性に関するいわゆるAlice判決について、判決が採用した判断基準である「2パートテスト」を中心に概要を紹介するとともに、発明の保護適格性に関するこれまでの最高裁判決の流れを振り返る。また、Alice判決等を受けて米国特許商標庁が公表した審査実務の指針の改訂状況を俯瞰しつつ、そこで取り上げられている特徴的な事例を分析し、併せてAlice判決以降の下級審判決において2パートテストがどのように適用されたかを解説する。最後に、2パートテストの要となる「InventiveConcept」の意義について検討する。 | |
81 第88回 ワシントン便り | |
今村 亘 (Wataru Imamura) 〔一般財団法人知的財産研究教育財団 知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕 |
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86 お知らせ | |
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