フォーラム107号
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知財研フォーラム 2016  Autumn Vol.107
特集 次世代知財システムの構築に向けて
知財研フォーラム107号 特集タイトル
■2016年11月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
フォーラム105号 目次(縮小画像) 目次PDF
Contents
巻頭言 アンチパテントの時代
山内 秀晃 (Hideaki Yamauchi) 〔塩野義製薬株式会社 知的財産部長〕
【特集】次世代知財システムの構築に向けて
3 「次世代知財システム検討委員会報告書」及び「知的財産推進計画2016」の概要について
  松村 将生 (Masao Matsumura) 〔内閣府 知的財産戦略推進事務局 参事官補佐 弁護士〕
 政府の知的財産戦略本部において本年5月に決定された「知的財産推進計画2016」の策定にあたって設置された「次世代知財システム検討委員会」では、デジタル・ネットワーク時代における次世代の知財システムのあり方について検討を行った。多様な政策手段を活用する新たな著作権システムの構築を目指すことや、AI創作物・3Dデータ等の新たな情報財の取扱い、国境を越える知財侵害への対応方法について一定の方向性を打ち出し、同計画に反映された。今後は同計画の施策を実行するとともに、検証評価を実施する。
10 著作権の一般的な制限条項の機能とその運用手法について
― 立法論において議論すべきことは何か ―
  田村 善之 (Yoshiyuki Tamura) 〔北海道大学 法学研究科 教授〕
 日本の著作権法に、著作権を制限する一般条項、いわゆる「日本版フェアユース」を導入しようとする試みは、立法の必要性を示す具体的な「立法事実」を欠くなどの反対論に見舞われた結果、個別の制限条項を導入するに止めた2012年著作権法改正により、いったん見送りとなった。しかし、近時、ふたたび立法化に向けた議論が再燃し始めている。検討に際しては、何故、個別の制限条項ではなく、一般条項による規律を求めるのかということを明らかにし、個別の制限条項の必要性に関する「立法事実」ではなく、最終的にいかなる行為を制限するのかということを判断する役割を、立法ではなく司法に委ねるという一般条項の真の意義に則した「立法事実」を探求する必要がある。くわえて、導入後の予測可能性を高め、 議論をより透明化するためには、一般条項が導入された場合、いかなるアプローチの下で、制限の可否が判断されるのか、という方法論的な検討が不可欠であると考える。フェア・ユースを「市場の失敗」の矯正として捉える考え方が有力な指針を提供してくれるだろう。
20 イノベーターを支援するための次世代知財制度に向けて
  水野 祐(Tasuku Mizuno) 〔シティライツ法律事務所 弁護士〕
 次世代の知的財産権をめぐる制度には、イノベーターを支援する観点から、法律だけでなく、ライセンスを含む契約、物理的・技術的構造であるアーキテクチャなど様々なレイヤーのグラデーションを持たせて設計されることが望ましい。本稿では、柔軟性を確保した権利制限規定、拡大集中許諾制度や報酬請求権付権利制限規定などの円滑なライセンスの仕組み、人工知能、オープン・イノベーションにおける知財制度のあり方等、「知的財産推進計画2016」においても言及されていた点について留意事項を述べる。そのうえで、昨今注目を集めるブロックチェーン技術が知財制度に及ぼす影響についても試論してみたい。
30 人工知能の活用と共有経済の進展から考察するこれからの知的財産
  江村 克己(Katsumi Emura) 〔日本電気株式会社 取締役 執行役員常務 兼 CTO〕
 我が国の人工知能を活用したビジネスが発展し、世界での存在感を高めていくためには、人工知能の活用実態に見合った制度整備が必要である。本稿では、産業界が人工知能を活用したビジネスを展開していく中で、現行法の枠組みでは解決しきれないと思われる知的財産上の課題を提起する。社会が共有経済型にシフトしている ことも意識すべき重要な要因である。
【寄稿】
38 意匠法による画像デザインの保護の拡充について
― 2016年4月1日の意匠審査基準の改訂とそれを踏まえた現行意匠法の考え方 ―
  山田 繁和 (Shigekazu Yamada) 〔特許庁 審判部 第34部門 審判長〕
 本稿は、平成28年4月1日に改訂された「画像デザインの保護の拡充」に関する意匠審査基準の改訂経緯と改訂内容を示すものである。今回の意匠審査基準の改訂内容は、画像デザインに関する「登録対象の拡充」と「創作非容易性判断の明確化」であり、その概要を示している。
45 発明創造の個人主義から集団主義へ ― 職務発明条例送審稿に対する評価 ―
  石必胜 (Bisheng Shi)〔金杜法律事務所 パートナー弁護士〕
高雪 (Xue Gao)〔中国人民大学 法学修士研究生〕
 職務発明条例送審稿の規定について、学界及び実務界では大きな論争が巻き起こっている。その基本的な立場の違いは専利制度が奨励する対象主体が企業・個人のどちらかであり、それにより法律がどちらに重点的に権益保護を与えるかを明らかにすることである。現代において、発明創造の主体はすでに「個人」から「集団」に転換し、営業利益及び資本を原動力とするイノベーション活動は企業が技術イノベーションの主体になること、なるべきことを決定付けた。そのため、職務発明条例送審稿が個人の権益保護を強調し、企業の利益保護に対するバランスを軽視することは、創造を奨励するという立法趣旨を達成できないおそれがある。
【連載】
49 判例研究㉓
均等の第1要件及び第5要件の解釈
― 知的財産高等裁判所(特別部)平成28年3月25日判決(平成27年(ネ)10014号・マキサカルシトール事件)―
 
山内 貴博(Takahiro Yamauchi)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
田島 弘基(Hiroki Tajima)〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
 本判決は、ボールスプライン事件最高裁判決が定立した五つの要件の立証責任の所在と、第1要件(特許発明の本質的部分)及び第5要件(意識的除外等)に関する判断基準を示した知財高裁大合議判決である。第1要件に関する判断基準では、「特許発明の貢献の程度」という新たな概念を用いた点に特色があり、第5要件に関する判断基準では、従前から議論となっていた出願時同効材に関して判断を示した。今後の議論の展開も含めて、注目に値する判決である。
60 中国の法改正・判例紹介⑰
デジタルゲームの知的財産権による保護
 
林達劉グループ〔北京林達劉知識産権研究所 北京魏啓学法律事務所〕
 魏啓学(Chixue Wei) 〔中国弁護士・弁理士〕
 陳傑 (Sai Chen)〔中国弁護士〕
 王洪亮 (Holy Wang)〔中国弁護士〕
 中国において、デジタルゲームは現在、エンターテインメント産業の重要な柱となっている。デジタルゲームは、その研究開発及び宣伝、推進の過程において、知的財産権の形成と運用に係わっているため、海賊版、模倣品などの問題が後を絶たない。本稿では、デジタルゲームの知的財産権の保護に対して、その保護範囲、保護方法及び保護過程において注意すべき問題などを分析するものとする。デ ジタルゲーム業界の知財関連者及び弁理士の先生方に少しでも参考になれば幸いである。
68 ドイツ特許関係判決紹介 第2回
ドイツにおける特許請求の解釈の一致・不一致
― ドイツ連邦通常裁判所2015年6月2日判決〔交差枠体事件〕―
BGH, Urteil v. 2.6.2015, GRUR 2015, 972 - Kreuzgestänge
 
川田 篤(Atsushi Kawada) 〔川田法律特許事務所 弁護士・弁理士〕
 本連載は、ドイツの特許関係訴訟の判決を紹介しながら、我が国の制度との相違点を浮き彫りにする。第2回の本稿は、ドイツの侵害訴訟の保護範囲の画定と無効訴訟の審理対象の認定との間の特許請求の解釈の不一致の許容性について判示した2015年(平成27年)のドイツ連邦通常裁判所の「交差枠体事件」上告審判決を紹介し、複数の手続が並行することによる問題点を探る。その際、我が国の侵害訴訟の技術的範囲の画定と無効審判及び審決取消訴訟の発明の要旨の認定との間の不一致に伴う問題点と対比する。
79 アメリカ合衆国最高裁判例評釈
特許期間満了後にロイヤリティの支払義務を課す契約は違法とすべきか
― キンブル事件合衆国最高裁判決の解説 ―
 
飯田 浩隆(Hirotaka Iida)〔株式会社日立製作所 法務本部 部長代理 米国ニューヨーク州弁護士〕
 本稿は、特許期間満了後にロイヤリティの支払義務を課す契約を違法としたブルロッテ判決の法理を維持した、キンブル事件合衆国最高裁判所判決を検討する。キンブル判決には、ブルロッテ判決の趣旨の解釈、特許期間満了後のロイヤリティ支払合意の経済効果、先例拘束性の原則の適否などの興味深い問題があり、ライセンス契約と独占禁止法の関係を考えるうえでも参考になる。
89 知財研OB紹介 第1回
 
日向寺 勲(Isao Hyugaji)〔本田技研工業(中国)投資有限公司 知識産権部 部長〕
   92 第90回 ワシントン便り
  今村 亘 (Wataru Imamura)
〔一般財団法人知的財産研究教育財団 知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
   97 知財研NEWS
   98 お知らせ
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