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平成29年9月25日
知財研意見交換会「シリコンバレーからみた知的財産の活用~イノベーション、ビジネス、人材の観点から~」

 このたび、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)シリコンバレーオフィスのRepresentativeである泉卓也氏をお招きし、知的財産に関する意見交換会を開催します。前半は、「シリコンバレーからみた知的財産の活用~イノベーション、ビジネス、人材の観点から~」と題して、講師が現地で感じた点を掘り下げてご紹介していただく予定です。後半は、講師と参加者様との間の意見交換会のセッションとし、本テーマのご感想やご意見の他、知的財産の活用などについて幅広く、意見交換できる時間を設けさせていただく予定です。参加費は無料ですので、皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

日 時 平成29年9月25日(月)10:00~11:30(9:30受付開始)
会 場 一般財団法人知的財産研究教育財団 知的財産研究所 会議室 (地図
東京都千代田区神田錦町三丁目11番地 精興竹橋共同ビル 5階
          東京メトロ東西線 竹橋駅(3b出口)より徒歩4分
          東京メトロ半蔵門線、都営新宿線神保町駅より徒歩8-10分
          都営三田線 神保町駅(A9出口)より徒歩3分
プログラム
10:00~
11:30
(意見交換会含む)
「シリコンバレーからみた知的財産の活用
~イノベーション、ビジネス、人材の観点から~」
概要・略歴
講師:泉 卓也氏
(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) シリコンバレーオフィス Representative)
メール配信サービス セミナー情報等が必要な方は「IIPメール配信サービス」をご利用ください。
定 員 45名(先着順)
参加費 無料

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シリコンバレーからみた知的財産の活用~イノベーション、ビジネス、人材の観点から~

【講師】

泉 卓也(イズミ タクヤ)氏
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
シリコンバレーオフィス Representative

【概要】

シリコンバレーをキーワードにイメージを膨らませてみる。人によっては、グーグル、アップル、フェイスブックなどを思い浮かべるかもしれないし、人によっては、ハイテクイノベーションの聖地を想像するかもしれない。スタンフォード大学やカルフォルニアの青い空を思う浮かべる人もいるだろう。確かに、シリコンバレーにはたくさんの有名企業がある。自動運転などの破壊的技術を持ち込む、グーグルなどのハイテク企業もある。そして、カリフォルニアの経済規模はGDPで世界6位であり、ベンチャーキャピタルの投資も豊富である。これらがシリコンバレーに対する一般的なイメージであると思うし、私もそのように思っていた。しかし、1年間走り回っていると、そのような一般的なイメージだけでは語ることができないことがたくさんあることに気づく。私が気づいた点を、イノベーション、ビジネス、人材という観点から掘り下げてみたい。シリコンバレーには、特にスタートアップを大切にする、ハイテクイノベーションの物語がある。

かつては、大企業の中央研究所から発明が生まれ、それが人々の生活を豊かにするというモデルがあった。しかし今では、スタートアップが新しいイノベーションの生成場所である。既存の大企業であるオールドスクールは、かつての研究成果を知的財産として持っているが、そのポートフォリオからとてもイノベーティブとは言えないような知財を使ってスタートアップを排除することは許されるものではない。このような「不適切」な権利行使からスタートアップを守るべきである。

この物語の実例がHoneywell対NESTの訴訟である。人によっては、オールドスクールがスタートアップを特許でいじめる構図に見えるようである。私はこれを「米国版下町ロケット」と呼んでいる 。

シリコンバレーで活動していると、事業価値を高めるために、様々な方法で知的財産を活用している企業があることに気づく。スタートアップを含む企業がパテントトロールから集団的に身を守るために形成されている団体がある。膨大な特許ポートフォリオを活用して、自社のサービスの利用を促進するプログラムを立ち上げた企業がある。自由な事業領域を確保するために多数の特許を購入する企業もある。IoT市場の立ち上げを優先し、IoT標準の特許を無償でライセンスする(RAND-Z)というポリシーを推し進める企業もある。事業価値を高めるべく、知財マネジメントの標準を策定しようという動きもある。知財は事業価値を高めるためにある、という基本的な理解が徹底されているように思われる。

シリコンバレーの強さは、専門家人材であり、人材のネットワークにある。赴任直後はネットワークがゼロであったが、少しずつネットワークを広げてきた。ネットワークが広がるほど、ネットワークがさらに広がるとともに、新しいアイデアに接することができるようになる。これがシリコンバレーの面白さでもあり、難しさでもある。そんなシリコンバレーでも、ビジネスに詳しい知財専門家の育成は難しいようである。ハイテク系のスタートアップでは、知財ポートフォリオ形成は後回しにされる。外部の法律事務所は、インハウスのような機能までは提供してくれないようである。逆に言えば、ビジネスに詳しいインハウスの機能をよく知っている知財専門家は、このスペースを埋めることができる。そして、このスペースに注目している人がいるし、そのような人材を育成しようという試みがある。その意味で、ロースクールにおけるスタートアップ実践支援プログラムは、とても興味深い。

先にも述べたように、シリコンバレーでは人材のネットワークが鍵である。残念ながら、シリコンバレーでは、知財分野における日本人の存在感は極めて薄い。インナーに入り込むことは容易ではないし、私も十分にできていない。NEDOシリコンバレー事務所の知財担当は、シリコンバレーにおける日本の知財専門家の活動を支援している。ぜひシリコンバレーに来て、日本を含む知的財産の世界を盛り上げてほしい。

【略歴】

北海道出身。東京大学理学部と理学系研究科で地球惑星物理学を専攻。理学修士。気象予報士。1999年に特許庁に入庁。審査官・審判官として、複写機、レーザープリンタ、画像診断機器(X線検出器、CTスキャン、超音波診断機器、MRI)、分析機器、遊技機を担当。その他、技術調査課(現企画調査課)、審判課、経済産業省通商機構部(TRIPS、TBT、EPA、ACTA等を担当)を経験。2008年にはジョージワシントン大学ロースクールでLLMを取得。2016年7月にNEDOに出向し、現在、NEDOシリコンバレー事務所次長として、知的財産と産業技術分野の調査を担当。 米国特許侵害訴訟における明確性の基準 : Nautilus, Inc. v. Biosig Instruments, Inc., 134 S. Ct. 2120 (2014) の解説(知財研フォーラム)、技術取引の自由化(国際経済法学会)、貿易上の懸念に関する多数国間レビュー(法律時報)、CAFCを巡る論戦は甦る(特技懇)など、いくつかの論文あり。

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