日中共同研究事業 平成25年度 第三回会議(北京)
ワークショップ(平成26年2月18日)
中国では、司法制度改革の一環として知的財産専門の裁判所の設置に関する検討が進められているが、知的財産専門の裁判所は知財戦略を検討する上でも重要なテーマです。中国の司法関係者から中国における検討状況や中国特有の課題等について生の声を得ることにより、日中の知財戦略の考察を更に深めることを目的として、研究討論会を開催しました。
討論会ではまず、中山一郎教授より当時の知財推進事務局の一員としての経験も踏まえた日本の知財高裁の設立の背景についての紹介、三村量一弁護士より知財高裁の判事としての経験及び退官後における訴訟代理人としての経験も踏まえた、知財高裁の運用に関する実務的な面についての発表が行われました。
次いで行われた全体討議では、北京市高級人民法院における調査研究や、江蘇省における知財専門の法廷設置に向けた取組みなどが紹介されました。また、参加した中国の司法関係者より、日本人講師に対し、日本の知財高裁の設置により得られた効果や管轄・審理運営といった実務面に関する積極的な質問が出され、議論が行われました。
討議の最後に、呉教授より総括として、中国における知的財産専門の裁判所設置については、「十八期三中全会」の決定で明記され、中国の中央政府における改革を全面的に深めていくための報告書に盛り込まれているだけでなく、今年度の中国最高人民法院の事業報告書にも記載されており、設置に向けた動きは今後加速することが予想されるという点が述べられました。また、主催者を代表した李教授からの閉会の挨拶では、中国はその国土の広さという課題と、同裁判所設置に向けた法整備が追い付いていない現状があり、諸外国の経験を取り入れつつ、中国にふさわしい法制度を整備する必要があるという提言がなされました。